ノートルダム女学院中学校 卒業式 学校長式辞

中学校_DSC9426卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
保護者の皆様、高いところからではありますが、本日はお嬢様の中学ご卒業、誠におめでとうございます。また、溝部名誉司教様、シスター和田理事長様を始めとするご来賓の皆様、本日はご多用の中、本校中学校卒業式にご参列いただき、誠にありがとうございます。

本日、皆さんは、3年間のノートルダム教育を終えられました。今年度2012年度は、ノートルダムにとっては、創立60周年の節目を迎えた大切な年でした。60年というと、皆さんの想像もつかない長い年月かもしれません。でも、この60年間、変わらずにノートルダムがいつの時代にも伝え続けてきたことは、やがて、ノートルダム女学院中学校の深い知恵の源となりました。卒業に際して、皆さんにもう一度それらを伝えます。ここにいる皆さんの大半は、さらなる3年間をノートルダムで過ごされますが、中には、ノートルダムを今日、出発するという方々もおられます。その方々も含めて、皆さんのかけがえのないここでの3年間の学びを、どうか、一生の糧にしていただきたいと思います。

この世界は、そしてこの宇宙は、すべてを超える大きな愛そのものである神によって創造されたと、ノートルダムはあなたに知らせてきました。愛によって創られないものは、命として存在することは決してありません。星も、海も、山も、草木も、花も、空の鳥も、地の動物たちも、そして、私たち自身も、生きとし生けるすべての命は、大きな愛によって創られ、だからこそ互いに連鎖し、つながり合って育まれ、成長し、そして、この世界での使命を得て、それを果たし、そしてやがては愛に帰っていく。かつて、朝礼の時間だったかに、あなたの命は、お父様、お母様、その方々のご両親、そのご両親と、さかのぼって一体何人の人々の存在によって可能になったのかという話をしたかと思いますが、それはそれはおびただしい人々が、あなたの命の存在のために深く関わり、その中の一人でも違っていたら、今のあなたは存在しませんでした。一つの命の誕生に、どれだけの人々の人生と、出会いと、生きざまが関わっているか、その気が遠くなるような、でも、真実の愛の連綿たるつながりこそが、神の愛の呼吸であり、神の愛の時間であり、神の愛の証しです。ですから一つの命はこんなに尊く、その存在はあまりにも重いのです。あなた方はお一人おひとり、ここノートルダムで、そのことをしっかりと学んでおられます。

あなた方の命は、この世に望まれて存在し始め、まだ15年ほどしかたっていません。ですから、ご自身に何ができるのか、ご自身の可能性はどこにあり、どこで花開くのか、それを今、皆さんは模索しています。一人ひとりは、神から使命を受け、それを果たし、神のもとに戻る、あなた方は、どうか神に聴いてください。「私に何を望まれていますか。私はあなたから頂いた命を、だれかのために、何かのために、どのように使えばいいのですか」と。どうかそれを、神との対話の中で心静かに聴いてください。それこそが、祈りです。神様は、あなたがそれを真摯に尋ねる時、必ず耳を傾けて聴いてくださり、そしてあなたに応えられるでしょう。神が直接、そのみ声でもってお応えになることもあるかも知れませんが、様々な人との出会い、言葉との出会い、出来事との出会い、それらの出会いを通して、神はあなたに語りかけられます。神は、あなたのために特別に用意されている時をお選びになり、その時でしか成し得ない出会いを与えてくださいます。どうぞ、その「時」に敏感に、そして与えられた「出会い」を神からのギフトとして豊かに受け止め、あなたの糧とし、成長を続けてください。

2年前の3月、日本中を、大きな哀しみと苦しみと、そしてそれを乗り越える強さへと導いた、東日本大震災。その時以来、人々は本当の対話の大切さに気づき始めたと言われています。そして本音で語り合うようになった。表面的、上面だけの会話や、その場限りのやりとりだけでやり過ごすには、人生はあまりにも不確実で、不確定である。また会える、また話せると思っていても、もう二度と会えないかも知れない。ありがとうと言いたい、ゆるしてほしいと語りかけたい、そう願っても、もう二度とそのチャンスは与えられないかも知れない。やりたいこと、やるべきこと、言いたいこと、言うべきことを先延ばしにして時間をやり過ごすには、それぞれに与えられた持ち時間はあまりにも短く、この世は不確実です。でも、人間の心と心のつながりは、そのような不確実な時間と空間の中で、愛に満ちた絆を探し求める存在なのだと、あの日以来、私たちは知り始めています。今、与えられているこの時に、本音で語り合い、心から対話し共感し合うこと、行うべきことを躊躇せず行うことが、どれだけ大切でかけがえのないことであるか、そのことをようやく、理解し始めた。これは、私たちに与えられた新たなる知恵であり、苦しみを越えて到達した真理でもありました。

今日で、ノートルダム女学院中学校での三年間を終え、新たなステージにさしかかろうとする皆さん、皆さんのこれからの青春の時間は、煌めく宝石のような時間です。それは意外に短く、でも想像しているよりははるかに、堅固な土台となって、今後の皆さんの人生を支えるものです。どうか、今のこのかけがえのない十代の青春の時間を、心を尽くして魂をつくして、神と他者と自己に誠をもって生き抜いてください。心から対話し、心から共感し、つながり合って共に生きる。すべてが失われても、最後に残るものは、そうやって培った心と心のつながりであり、神が最もお望みのことであるということを胸に刻んで、次の扉を開けてください。

神の祝福が皆様の上に豊かにありますように、お祈りいたしております。

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