ノートルダム女学院中学高等学校 2023年度 入学式 式辞

入学式 式辞

2023年410

ノートルダム女学院中学高等学校 学校長 栗本嘉子

 

 新入生の皆さん、ノートルダム女学院中学高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。本日ここに皆様をお迎えできることを、私は心から嬉しく思います。保護者の皆様、高いところからではありますが、本日はお嬢様のご入学、誠におめでとうございます。今後、様々な場面で、ノートルダム教育の充実のために、保護者様のご協力を頂戴することと思いますが、その節にはどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 新型コロナウイルスの収束の見通しがようやく立つようになり、マスク着用の要請も解かれ、鹿ケ谷の桜の、その目を見張る美しさは、見る人たちに慰めと安らぎの気持ちを存分に与えてくれました。まず冒頭に、3年に及ぶ、人類史上有数のパンデミックとされるこのウイルスでお亡くなりになった世界中の方々、また、昨今のウクライナでの戦争、また、2月初旬に発生したトルコ・シリアの大地震、それらにより天に召されたすべての人が、神様のみ許で安らかに憩われるようにお祈りいたします。また、ご遺族に、少しでも心の平安が与えられるように、そして、今なお、不安な状況の中で過ごされている方々に、神様の守りがありますように、心からお祈りをお捧げしたいと思います。この困難な時代に、真の平和への想い、大切な命への想いに、私たちの心を向けさせてくださるように、神様に信頼して祈り求めましょう。

 

 さて、本日、皆さんはノートルダム女学院中学高等学校という家族、ファミリーの一員となられました。ファミリーとは、偶然寄せ集められた人々の集団ではなく、同じ心で成長を遂げようとする人々から成る共同体を意味します。ここ、ノートルダム・ファミリーでは、一人ひとりが神様から愛されていることを知り、自分の可能性を信じ、夢を見つけ、目標に向かって着実に歩む努力をしながら、自分の周りの人々のこと、この地球の生きとし生けるものの命と尊厳を常に思いやり、大切にし合って、一緒に成長していきます。

 

 皆さん、皆さんはコロナの時代と言われる時に、小学校、また中学校の生活でのあらゆる制限を余儀なくされました。もう、このようなことは二度と起きてほしくない、と皆さんは思われているかも知れませんが、今後、皆さんお一人おひとりの人生において、想定していたこと、計画していたこと、楽しみに待っていたことが、その通りにできないことがあるかも知れません。その時、皆さんに期待される力は、この3年間を乗り越えた経験からくる力です。そして、自分が持っている知恵や知識を、いろいろな考えをもつ多様な人々と協力しながら組み立て、新しいものを創造していく力であり、そうして作り出されたものを、広い視野で、地球全体の共通の善の為に賢明に使っていく力です。なぜならば、皆さんは、すでにこの3年がそうであったように、そして今後は益々、いつの時代の誰よりも、見たことも聞いたことも、体験したこともないことに、出会うからです。出会ってそこから得た何かによって、使命をもって新しい時代を切り開いていく人々だからです。それは、時には緊張したり、不安が高まったりするかも知れませんが、同時に、全く新しい、ワクワクするように楽しい、見たことがない程美しい、想像を超えるほど面白い世界が待っているということです。そのことをよく憶えていてください。そして、そのワクワクする面白さが、あるいはその美しさが、この地球全体の益となっていくために、皆さん方の日々の学習は、不可欠です。日々、丁寧に学習する人こそが、これからの地球全体を支えていくのです。私の小さな力なんて、と今、思っている人が、もしもあなたであれば、それは直ぐに考え直してください。 強引で大きな、一方向の力より、危機を共に乗り越えようとした、しなやかで、思いやり深い小さな心の結集こそが、正しい方向に地球を動かしていくことになるのですから。皆さんは、神様から与えられているご自分にしかないその素晴らしさを、どうか信じてください。

 

 この後、祈りの式の中で、皆さんは、聖書の言葉をお聴きになります。「あなたがたは世の光である」というマタイ福音書第5章の言葉です。それを、よくお聴きになってください。このノートルダム女学院で、ご自分の内側に輝いている光に気づき、その光を、どうぞ、人々の前に、輝かせてください。ばらばらになっている世界を、あなたの光でつなげてください。困っている人、心細く泣いている人がいれば、あなたの光で照らし、力づけてください。自分と異なるように見える人がいても、あなたの光で、違いよりも一緒にやれる何かを見つけてください。光は、暗闇を照らします。光があれば、人は闇を恐れない。光ある限り、行くべきところへ辿りつけるのです。どうか、それを忘れないで、ノートルダム女学院の毎日の生活の中で、その光をご自身の内に育てることを学び、ここを卒業される時、たとえ小さくとも、世界のどこかを照らす確かな光となられることを心から願っています。

 

 最後に、まもなく、私からお一人おひとりにお渡しする校章について、お話しします。非常に小さなものですが、大変大きな意味が込められています。この校章の丸く描かれている部分には、本校の建学の精神、ノートルダムの魂が、言葉になって刻まれています。ラテン語で、“Virtus et Scientia”、日本語では、「徳と知」という意味です。「徳」とは、愛すること、信じること、祈ること、共感することなど、神様の似姿につくられた人間が、神様の心で生きるようにと招かれている、その証の言葉です。そして、「知」とは、人類が築き上げてきた知恵や知識、創られたこの世界の神秘を、探究し続けることが許される力そのものです。この建学の精神を、毎日生きていくのに必要な行動の方法があります。その方法とは、聖母マリアの生き方から導き出された4つの動詞の中にあります。尊ぶ、対話する、共感する、行動する、この4つの動詞の総称を、私たちは「ミッション・コミットメント~私たちの決意」と呼んで、小学校から大学まで、ノートルダムに属するすべての人にとって、とても大切にしている生き方そのものです。生きとし生けるものを「尊ぶ」こと、どんな時に心を込めて聴きながら、「対話する」こと、また、心を開いて「共感する」こと、そして、対話し、決断し、みずから「行動する」こと。どうか、今私がお話ししたことをよく理解して、今日からこのノートルダム女学院で過ごされる日々が、一人ひとりにとって幸せな毎日であるために、お互いを大切にし合いながら丁寧に生きてほしいと、校長として私は心より願っています。

 

ご入学に際して、神様の祝福が皆さんのうちに豊かにありますように、お祈りいたします。

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