エッセイ 本校創立60周年記念式典が開催されました

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_DSC4638先日10月12日には、本校創立60周年記念式典がびわ湖ホールで開催されました。式典と音楽の集いの2部構成でしたが、本校高校1,2年全員と卒業生たち300人近くの人々によって歌い上げられた「マニフィカト」大合唱と、オーケストラクラブによる「大学祝典序曲」は60年の創立記念行事に相応しい格調高いものであったと誇りに思っています。

その時の様子を写真や動画で皆様にできるだけ早くお見せしたいと思います。今回、こちらでは、第一部の式典の方で私が話した式辞の原稿の全文を上げてほしいという要望にお応えすることにします。当日はほぼこれに従って話しました。女学院のこれまでの60年間が、変わらずに大切にしてきた本校の価値観と行動指針を三つ、挙げてお話させていただきました。そして、これからの新たな第一歩を歩み出す私たちが、どこを目指してどのように生きていくことが神様に望まれているのかということをご一緒に考えるよい機会になったと思っています。

 

 

 

創立60周年記念式典 式辞

 本日、私たちは、ノートルダム女学院中学校高等学校の創立60周年をお祝いするために、このびわ湖ホールに集っています。なんという特別で、素晴らしい時なのでしょう。神様のご意志で建てられ、そして成長したこの学校の60年間に思いを馳せ、そして今日からの新たな第一歩を踏み出すための決意を、神様のみ前にお捧げする、特別なこの時間を、今ここに集う皆様方と共にすることができることを、私はこの上ない喜びと感じています。

 ここにいる生徒の皆さんは、ご自身が60年の本校の歴史の最先端を生きる大切な人たちであると知って下さい。

そして、保護者の皆様、本日はご参加くださり誠にありがとうございます。この記念すべき時に、皆様の大切なお嬢様の教育をお委ね頂いたこの学校が、どのような心で生き、何をめざす学校なのかということを、本日のひとときを通して、是非感じ知って頂きたく思っております。

いつも女学院を様々な方面から支えて下さっているご来賓の皆様、本日は、ご多用のところ、女学院の特別な日のために、このように駆けつけていただきましたことを、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

 ノートルダム女学院中学高等学校は、ドイツにおいて、マザーテレジアゲルハルディンガーが創設されたノートルダム教育修道女会によって、1952年、京都の鹿ヶ谷の地に開学いたしました。

ノートルダム教育は、世界のどこにあっても、女性が、神の愛のうちに、他者と自己に誠をもって生きる生き方を学ぶ学校、質の高い教育を通して、また本物に触れる感動を通して、その可能性を無限に開花させようと励みます。

日本のノートルダム教育は、ドイツから広がり、アメリカ合衆国ミズリー州セントルイスのシスター方によって始まりました。鹿ヶ谷の土地に直接種が蒔かれたのです。その種は、60年の歳月を経てここまで成長して参りました。今日、1万人以上の卒業生が生まれるカトリックミッションスクールとして、その根を張り続けています。
 言葉という手段では到底表現できない60年という歳月に、私たちが受け取ったもの、そして未来へと引き継ぐべきものはあまりにも多いですが、でも、それをあえて、三つの項目で表してみることを試みたのが、この4月、私が学校長に就任した最初の入学式においてでした。

就任するに際して、私は改めて、この激動の時代、女子カトリック・ミッション校にとって決して順風ではない時にあって、ノートルダム女学院の存在の理由とその証しについて祈り、黙想しました。私が生徒として、ノートルダムで学んだものは何だったのか。マザーの娘であるアメリカ人、日本人のシスター方が命をかけて、私たち生徒に知らせたかったものは何だったのか。創立者マザーが、最も大切だと思っておられるものは何なのか。そして徐々に、私の心の内側ではっきりしてきたことが、次の3つのことがらだったのです。

女性の12歳から18歳までというかけがえのない大切な思春期に、ここで学ぶ生徒の皆さんが在学中に体得してほしいこと、その一つめは、生徒の皆さん一人ひとりは、神様に既に愛されて存在しているかけがえのない大切な人々である、ということです。この学校の様々な場面で、そのことに気づいてほしい。神様はあなた方一人一人を無限に愛されていることを。神はあなた方を愛さずにはおれない。神が愛そのものだからです。それを知ることは、皆さんお一人お一人の人生の旅路の究極の目的といっても過言ではありません。その旅路に出ることを、この学校での学びから始めてほしいと願っています。

二つめは、あなた方は一人ひとり、神様から、無限のすばらしさと可能性を与えられているということです。そして、その可能性は、他者のために開かれたものであり、だれかの幸せのために、自分の使命を生きる時、自分の存在を懸けた時、あなたの人生の完全開花が成し遂げられると知ってください。あなた自身の素晴らしさは何か、そしてどのような可能性を秘めているのか、そのことを、この女学院において、あなたご自身が見つけて下さい。そして、神様はあなたがそれを見つけ、その可能性に向かって努力を続けるその時に、優しく寄り添って必ず助けてくださいます。そのことを知ってほしいのです。

三つめは、あなたは、この世界の、あるいは宇宙の構成員であるという気づきです。神がお造りになったこの宇宙で、皆さん一人一人は、あらゆるものとつながり合って生きています。全世界の多様な人々とつながり合っていることはいうまでもなく、動植物、自然、この宇宙のあらゆる被造物、つまり神がお造りになったものと密接につながり合い、お互いに生かし合って生きています。そのことを知ってください。そして多様に存在するこれらの違いを知り、受け入れ、そして、やがては世界中のすべての被造物が共に豊かに生きていくために、努力して行動できる人に成長して頂きたいのです。

以上これらの三つのことがらは、これまでにノートルダム教育があらゆる場面で真摯に行ってきたことがらであり、そして次の時代に私たちが責任をもって受け継いでいかねばならない大切な価値観と行動指針です。これらを実際に生きることが、神様と共に責任をもって未来をつくることにつながります。

特に今現在、地球はあらゆる側面で傷つき、うめいています。自然界のあらゆる場所で、その環境にひずみが起き破壊が進んでいます。また、世界の国々が急速につながり合うように見える一方で、そのために地球社会では経済的な格差が生まれ、深刻な貧困が進み、すみに押しやられて泣きながら生きている人々が急増しています。私たちができることは何か、学ぶことは何か、変えていけることは何か、それを問い続けましょう。そして行動に移しましょう。

生徒の皆さん、神様は心から皆さんのことを愛されています。そして望んでおられます。ノートルダムで過ごす皆さんが、誠実で優しい人に育つように。そして困っている人、助けが必要な人のことを思いやれる人になれるように。人だけでなく、自然に対しても、世界の様々な不正義や、そこから生まれる必要性に対しても、敏感になれるように。そしてニーズに対して行動できる人になれるように。神様は、のぞんでおられます。だからもっと様々なことを勉強し、自分の糧にしてください。視野を拡げ、愛深く生きてください。それが神様の、そして学校長としての私の願いです。

保護者の皆様、ノートルダム女学院で、このようなご縁を頂き、そしてお出会いできたことを神様に深く感謝しています。私たちのノートルダム教育に信頼をお寄せくださっていることにも深く感謝しています。どうか、女学院を、そしてお嬢様を共に育むパートナーとして、これからもよろしくお願いいたします。

ご来賓の皆様、本日よりまた新たにノートルダム教育の実現に私たちは全力を投じます。変えてはならないものを守り、変えていくべきことについてはしなやかに、その識別の眼力を磨きながら、前に前にと進んで参ります。温かいご支援を頂ければこれ以上の喜びはありません。

特にシスター方、高いところからではありますが、いつもいつも、私たちのために温かくサポートくださり、また日々祈っていてくださり、本当にありがとうございます。これまで命を投じて行われてきたノートルダム教育を、次世代の私たちにお任せになるにあたって、お心を砕いて下さっている日々、感謝しております。信頼して、見守って下さる温かい眼差しを感じて、私は日々励まされています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

これをもちまして、私の式辞とさせて頂きます。

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