人の心に働きかける仕事

始業式での私の話の中で紹介した映画、「風立ちぬ」の監督、宮崎駿さんが、この作品を最後に引退されます。1979年から今回で11作品に及んだ宮崎ワールドが、もう最後になるのは非常に寂しく、残念です。私がまだ大学で教鞭を執っていたころ、「となりのトトロ」が米国でも人気を博し、英語の吹替えバージョンと、オリジナルの日本語の台詞を比較し、そこからあぶり出せる比較文化研究を行ったことや、「千と千尋の神隠し」に隠されたシンボルの謎解きで学生たちと議論が盛り上がったことなど、今でも生き生きと思い出します。宮崎作品の様々な要素が観る人の心を捉えて離さず、その人のイマジネーションをかき立て、何かが生み出されていくまでに至るのですね。人の心に働きかける、そんな仕事は素敵です。「風立ちぬ」も、美しい飛行機を作りたかった人物を通して、私は自分の仕事についても改めて考える機会になりました。「アニメを芸術に高めた」は、本日の京都新聞の見出しでした。ありがとうございました、宮崎監督!

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