ノートルダム女学院の
教育と社会を結ぶ交差点

オンライン授業のこれから

テーマ2

すべての教科をオンライン授業に

体育のオンライン化に取り組む

2021.04.05 配信

CASE 2

健康管理系体育授業のオンライン化

三井 貴美子

Kimiko Mitsui

体育科

おもにダンスを指導する体育Aを担当。A-Yoga Mind and Body Movement Therapy 認定インストラクターの資格も持ち、これまでにもスポーツクラブ、ヨガスタジオをはじめ、高齢者福祉施設、医療施設等で、ヨガを活用した運動指導や慢性的な痛みを抱えた人へのレッスンケアを行ってきた。非常勤講師を経て、2020年4月から体育科の常勤講師に。

自分で心と体をケアできる力を!
Zoomでヨガのライブ授業を実現

体育授業のもう一つの目的
セルフコントロールできる力を育てたい

通常のヨガの授業

体育の授業は、大別すると二つのジャンルに分けられる。一つはさまざまなスポーツのトレーニングを通じて身体を鍛えること。そしてもう一つは、心と体の健康を維持する術を身につけること。文字通り、体育は「動作」を通して「心身」を知り整えるための科目だ。
三井が担当・指導するのは後者、心と体の健康を整えその人が持つ力を最大限発揮するための土台を身につける授業だ。三井は、自らの経歴を振り返りながら話す。
「ノートルダム女学院では、非常勤講師を務め、2020年4月からは体育科の常勤講師として着任することとなりました。これまで私は、A-Yogaのインストラクターとして、おもにスポーツ施設や、高齢者施設、医療関連施設などでヨガのレッスンを指導してきました。A-Yogaを簡単に説明すれば、『五感をフルに活かして、心身の健康と自分らしい人生を見つけるお手伝いをする動作教育法』です。常勤教員として実技も指導することとなり、生徒にも自分自身が望む人生を歩んでいけるよう自分の体と心を自分でコントロールできるようになってほしい、非認知能力を支える土台となる授業を組み立てよう、そう考えていた矢先の休校でした。さすがにオンラインでのヨガの指導は難しいか…と迷いましたが、それでもやはり生徒には“自分を感じる力、自分の内面にあるものを見つめ気づき、その部分と向き合う授業を展開していきたかった。そのためにも、単に映像を見ながらヨガの動きをなぞるだけの授業ではなく、あえてWebを使ったライブでの授業に踏み切りました」。

自分の体への集中が求められるヨガ
オンラインだからこそ、ひとりになれた

当初考えていたリアルの授業から、オンラインの授業へ。そのために授業の組み立てもチューニングし直して、オンラインでのヨガの授業が始まった。

● ヨガの授業の流れ

最初の5分

あいさつ

Zoomで全員が顔を合わせ、チャットで今の自分の心身の状態を報告

40分

実技

Zoomから聞こえる先生の指導に従って、各自で身体を動かす

最後の5分

振り返り

ヨガを終えてZoomで全員が顔を合わせ、チャットで今の体の状態や授業の感想を共有

「実際にやってみて、あらためて発見したことがあります。一つの場所に大勢で集まってヨガをするよりも、生徒が自分の家で一人で実践するほうが、自分に対する意識が向きやすいな、と。体育の授業は、机と椅子という区切りがなく、生徒同士の距離が近くなり賑やかになりがちです。実技の時間も、隣の子が気になって、自分の身体に意識を集中させるまでには至らないことも多いんです。でも、オンラインは違いました。一人ひとりが自分の安心安全、落ち着ける場所できちんと自分の体、感覚の変化に集中できる、そう感じました」。
実技の時間には、生徒はPCやタブレットの画面を見ることもなく、スピーカーから流れる先生の声だけに耳を傾けて、静かに深く身体を動かす。ヨガという運動の特性もあるのだろうが、当初考えていた以上の成果が得られ、あらためてオンラインとヨガの相性の良さにも気がついた。

中学・高校の授業に適した
ヨガの活用法を生み出したい

とはいえやはり、オンラインでは難しいと感じる点もあった。それはチームづくりだ。
「4月は、新しいクラスと授業を、生徒と生徒、生徒と教員が一緒につくり上げていく時期です。みんなで集まって、顔を合わせて話しながら、そのクラスらしい一体感のある授業、学びあいの場ができ上がっていきます。それができれば、感想を述べ合う時間なども、活発に発言が飛び交う。そのスタート地点で休校になってしまった。限られたコマ数とモニター越しのコミュニケーションだけでは、そのクラスならではの雰囲気をつくるまでには及びませんでした。また、クラスの全員30人が同時にZoomに入るため、生徒同士で発言するタイミングをつかむのも難しかったようです。これらの点は、今後オンラインでヨガの授業を行う際の検討課題です」。
自分をきちんと感じられる時間を持つことは、セルフコントロールする力を身につけるための第一歩だ。その視点から見ればヨガは、中学・高校の授業との親和性も高い運動だ。学校再開後、生徒のなかには、「家でヨガをする習慣がついた」「外出自粛の期間中は、運動不足を解消するために教えてもらったヨガやったよ」「ヨガをするとスッキリする」といった感想をくれた生徒もいるという。
「私はこれからも、授業に積極的にヨガを取り入れていこうと考えています。ただし、これまで私が行ってきたヨガのレッスンは、その多くが大人を対象としたものでした。大人なら抽象的な言葉でもある程度のイメージを描いてくれますが、中学生・高校生にはもっとかみ砕いて表現しないとイメージが伝わりくいこともわかりました。引き続き、中学・高校生に適したヨガの活用法、授業のつくり方を研究していく予定です」。

ホワイトボードを活用して、喋らない学び合い(聴覚のシャットアウト)(保健)