ノートルダム女学院の
教育と社会を結ぶ交差点

オンライン授業のこれから

テーマ2

すべての教科をオンライン授業に

体育のオンライン化に取り組む

2021.04.05 配信

CASE 1

実技系授業・体育のオンライン化

上野 剛

Tsuyoshi Ueno

体育科

おもに球技を指導する体育Bを担当。

球技の授業に、YouTube動画を活用
体力やレベルに応じた練習が可能に

授業を分解して中身を検証すれば、
オンライン化のヒントが見えてくる

ノートルダム女学院では、全国一斉休校が決まった直後から、「休校中であっても学習を止めない」ことを目指して、4月からのすべての授業をオンライン化することを確認。それに向けた準備を始めた。
すべてオンライン化しようとしたときに障壁となるのは、「実技系科目」だ。中でも体育の実技は難易度が高いように思われる。あたり前だが、家にはグラウンドも体育館もない。間近で手本を示しながら教えることもできない。
おもに球技系実技を指導している上野は言う。「指導内容を分解し、その一つひとつの中身を見直せば、オンライン化するヒントが見えてきます」。
ノートルダム女学院では、約10年前には、各教室にデジタルホワイトボード(電子黒板)を導入した。そのタイミングで、上野は体育館にも可動式のデジタルホワイトボードを設置した。

デジタルホワイトボードを使った体育の授業(流れの説明)

基本となるフォームなどを説明

「実技とはいえ、授業ではいろんなレクチャーをします。冒頭には50分の授業の流れをPowerPointで説明したり、あるいはたとえばバレーボールのオーバーハンドパスやアンダーハンドパスといった基本フォームを写真や動画で見せたり。練習を重ねた上級生なら言葉だけで指示してもそれなりに動けますが、入学して間もない中学1年生だとできないことも多いんですよ。そんな時には、たとえばPowerPointのアニメーション機能などを使って動きを視覚的に指示する、そうしたほうが理解も動きも早い。実技系といってもすべて間近でのお手本が必要なわけではなく、体を動かした練習ばかりでもありません。むしろ『動くための理論』を頭に入れてもらう指導が大切なことも多い。こうした部分は、ICTを活用した効率のよい指導法を研究したほうがよい領域です」。

ノートルダムの生徒も教員も、
オンライン化の下地はできていた

またノートルダム女学院では、3年前から生徒一人ひとりが自分用のタブレットを所持している。
「私が顧問を務めるバスケットボールクラブでは、このタブレットも活用していました。練習や試合の様子を動画で撮影。部員なら誰でも見られるようにデータはGoogle ドライブに保管し、オフェンス・ディフェンスのフォーメーション確認や相手チームの動きなどを分析・活用していました。実技でありながらも、これもICTを活用したからこそ実現できた指導方法です。そうした観点からみれば、ノートルダム女学院に限っていえば、体育の授業のオンライン化の下地は、ある一定のレベルまではできていたと言えると思います」。

バスケットボールクラブでは、試合を収録した映像を活用して練習

生徒の自主練用映像をヒアリング
リスト化して授業の教材に活用

4月には、オンライン授業がスタートした。準備するにあたって、上野はこれまでの経験から当然、映像を取り入れることを検討した。だが、自分で映像を制作するには期間が短すぎた。
「自分で球技ごとの映像を制作するのは、不可能です。そこで目をつけたのがYouTube。ここにはいろんな球技のトレーニング用ビデオがあります。レベルも多彩、トレーニング法もさまざま。実は体育系クラブに所属する生徒には、自主練習用に、自分のレベルにあった練習法や好きなトレーニング法の映像を使っている生徒が多いんです。それを生徒にヒアリングしました。生徒から推薦してもらった映像は、強度別にレベル分けしてリスト化し共有する。そうしておけば、在宅で自分のレベルにあわせたトレーニングを、自分のペースで練習することができます」。

休校期間中につくった自主練習用動画リスト

「一過性」に陥りがちな実技授業が、
「蓄積型」の授業に変わる可能性も

この方法からは、思わぬ効果も見えてきた。
「ゆる過ぎず、きつ過ぎず。適正な負荷で上達が実感できる練習なら、モチベーションも維持しやすい。映像ですから、授業時間以外に何度でも反復練習できます。これまでよりも自主性・自律性の高い授業になる予感もしました」。
上野は、今回のオンライン授業の経験を通じて、これからの体育の授業をこう考える。
「休校があろうがなかろうが、これからは、生の動きを見ながらの指導するリアル授業、ルール解説やフォーメーションプレイのセオリーなどを学ぶための映像授業、さらにはレポート提出や課題設定や弱点指導などICTを活用したパーソナル指導、これらの最適な組み合わせを考えていきたいと思っています」。

「そうしていくことで、結果的には、体育あるいは他の実技系科目の授業の組み立て方を根本的に変えられるかもしれません。ともすればこれまでの体育の授業は、50分間授業して『あとは各自で練習しておくように』で終わってしまいがち。『一過性の授業』になってしまう危険もはらんでいました。今後、さまざまなツールの活用を最適化できれば、より密度と効果の高い『蓄積型の授業』へと変えていける、そんな可能性を感じています」。