ノートルダム女学院の
教育と社会を結ぶ交差点

クラブ&生徒会活動・学校行事のこれから

テーマ1

生徒会活動やクラブ活動は、
仲間を思いやる心と協働性を
育む場

いま自分は、誰かのために、何ができるのか?

2021.04.05 配信

CASE 1

オーケストラクラブの取り組み

中 勝弘

Katsuhiro Naka

音楽科 オーケストラクラブ顧問

教員歴12年。奈良市出身。3歳よりピアノ、15歳よりフルートを始める。大学を卒業し大学院在籍中は、ソロ・室内楽・オーケストラなど多方面にてフルート奏者として活動する。2008年より本校教員としてオーケストラクラブ顧問・指揮者を務める。自身の音楽活動で培った「生演奏の素晴らしさ」を生徒たちに伝えるため日々奮闘中。

全校のみんなに“元気の出る音楽”を届けたい
オンラインで奏でるオーケストラ映像を全員で制作

京都府内には5校のみ
創設69年の伝統あるクラブ

オーケストラクラブの歴史は、ノートルダム女学院の開校時にまで遡る。第二次世界大戦直後の1948年、4人のシスターがアメリカから京都に派遣された。彼女らが中心となり、1952年にはノートルダム女学院中学校が、53年には高等学校が開校した。そのシスターがもってきたヴァイオリンで演奏会を始めたのが、オーケストラクラブの始まりである。2021年で創設69年目を迎える。
クラブの顧問・中は、2020年の年明けからのクラブ活動を振り返る。
「オーケストラクラブは、毎年春には定期演奏会を開催しています。1994年から続けられている伝統ある演奏会で、クラブにとっては1年でもっとも大きなイベント。保護者の方はもちろん、学外からもお客様をお招きして行います。25回目となる2020年は、記念すべき定期演奏会として、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの大ホール(客席数1,848席)で4月12日に開催する予定でした」。

演奏会や大会が次々に中止決定
次第にモチベーションが下がっていく

「しかしその定期演奏会も、3月からの休校にあわせて、まずは『5月1日に延期』することに。状況が好転する気配はなく、最終的には『中止』せざるを得ませんでした。4月から高校3年生になる生徒は、この演奏会を花道として引退し、受験準備に向かい始めます。いわば、クラブ活動の集大成となる場でした。3年生はもちろんですが、他の学年生徒にとってもショックは大きかったと思います」。
予定していた定期演奏会では、ブラームス交響曲第2番、ベートーヴェン「エグモント」序曲、サン・サーンス アルジェリア組曲第4番「フランス軍隊行進曲」の3曲を演奏する予定だった。休憩も含め、約2時間に及ぶプログラムだ。ブラームスとサン・サーンスの2曲は、その演奏会で初披露する楽曲で、1月から練習を始めたところだった。
「3学期末テスト明け、3月からの約1カ月で追いこんでいくつもりでした。その矢先の休校です。クラブでは休校当初から、部員がZoomを使ったミーティングを自主的に開いていました。『4月には学校再開できるかな? 練習できるよね?』。不安のなかにも希望を見つけたい、よくそんな会話が聞かれましたが、残念ながらそれは叶いませんでした…」。

そのほかの大会も、次々と中止が決まっていった。夏に高知で行われる全国高等学校総合文化祭には、オーケストラクラブを持つ京都府内の私立中学・高等学校5校(洛星、京都女子、同志社、同志社女子、ノートルダム女学院)が合同演奏する予定だった。しかし、合同練習ができないため辞退した。毎年夏休みに行う3泊4日の合宿も中止が決定。それは部員のモチベーションにも影響を与えた。

全校生徒に元気を出してもらうために
自分たちにできる“何か”をつくろう

だが、ふさぎこみ続けるには、持て余した時間が多すぎた。
4月も始まり、部員からも「演奏会や大会の中止は仕方ない。クラブとして全校生徒に元気を出してもらえるような“何か”をつくろう」という声が上がり始めた。
「何しろ突然の休校だったため、楽器を家に持って帰っていない生徒もいました。そこでまず、家に楽器はあるか?家は演奏できる環境か?といったヒアリングから始めたんです。打楽器や大きな金管楽器などはムリとしても、ヴァイオリンなどの弦楽器や大型ではない管楽器ならなんとかそろう。ならば、それらを使って演奏映像をつくり、全校のみんなに届けよう!部員らの意見がまとまりました」。
そこからは、突貫作業だった。いまある楽器でできて心に響く曲をと考え、演目は「負けないで」に決まった。すぐに楽譜をつくり、Google Classroomに設けたクラブの部室で配布された。楽器がある生徒は、1週間で練習し、それぞれの家で撮影・収録した。映像編集の際に音がずれないよう、メトロノームを刻みながらの演奏だ。楽器を持って帰っていなかった生徒は、みんなに伝えたい思いを書き込んだメッセージボードを掲げ、それを撮影した。何らかの形で全員が出演する、それも部員全員で決めたルールだった。
それぞれが撮影・収録した映像データが、続々とGoogle Classroomの部室に集められた。顧問の中が、それを一本の映像に編集して仕上げていく。目標としたゴールデンウィーク後の5月16日、オーケストラクラブの「テレワーク演奏映像」は、全校生徒に配信された。

一緒に音楽を楽しめれば、それが一番
その場・その時への感動や感謝も育つ

中は、もともとはクラシックの演奏家だった。「生演奏はいいですよ。みんなで音を重ね、聴く人も一体となって音楽を楽しめれば、それが一番です。ちょっとぐらい下手でもかまいません。ましてや、オーケストラクラブに入る生徒たちは、将来、音楽のプロになるわけではありません。だから私は、どんなレベルであれ、全員を舞台に上げています。集中力や瞬発力、その場・その時に感動・感謝できる豊かな心が育ちますから」。
「また、私の経験からいえば、クラブ活動と成績は両立します。いやむしろ、相乗効果が高い。クラブに熱中できる生徒は、成績も加速度を増して伸びていく。なかには「受験に備えてクラブをやめたい」というケースもありますが、私はあえて『やめたらあかんで、絶対に!』と引き止めています」。

放課後のオーケストラクラブの練習風景

置かれた環境で何ができるか?
生きる力を養う、それがクラブの意義

中は、今回の部員たちの活動を振り返って話す。
「『クラブって何のためにやるの?』『オーケストラって、自分にとって何?』。演奏会や大会の中止決定が続いたころのミーティングでは、自分たちが置かれた環境をどう受けとめればよいのか、戸惑う声もありました。しかし、生徒はそこから自分たちで立ち上った。置かれた環境を嘆くのではなく、置かれた環境でも今自分は何ができるのか?を考え始めた。生きる力を養う、それがクラブ活動なんだなとあらためて感じた瞬間でした」。
「残念ながら、今年は大きなステージに立つことはできませんでした。しかし、みんなで一つのものをつくり上げるという点においては、例年に勝るとも劣らず、記憶に残る経験だったように思います。2021年4月11日の定期演奏会開催に向けて、いま部員たちは心をひとつにして練習に臨んでいます。そのころにはもう、今の高校3年生は卒業しています。それでも彼女たちをスペシャルゲストとして招待し、みんなで一緒に演奏を楽しむつもりにしています」。

在校生VOICE

  • 新水 伶彩

    中学1年生
    STE@M探究コース

    オーケストラクラブの魅力は、文化祭やオープンスクールなど学校全体のイベントを盛り上げられるところ。中学1年から高校2年までの5学年がメンバーです。私は入学してから一度も全員で演奏したことがなく、文化祭の生演奏も合宿も中止。高校2年生の先輩とは、1年間しか一緒にいられないのに、その時間が削られてしまいとても残念でした。

  • 岡村 安早日

    中学2年生
    プレップ総合コース

    私たちのクラブには、後輩の私たちを引っ張っていってくれる頼れる先輩が大勢います。そのため楽器初心者の私も、安心して飛び込むことができました。自粛期間中は、リモート演奏など新しいことにも挑戦。学校再開後は、距離をとって練習するため、合わせ練習で指揮者に音が遅れて届く不都合もありますが、全員で工夫して練習に励んでいます。

  • 岡本 ひなた

    中学3年生
    プレップ総合コース

    春の定期演奏会は、お世話になった先輩方と演奏できる最後の大舞台。だから中止になりショックでした。このクラブは、みんなで協力しあえるのがいいところ。それなのに今は、みんなの音を合わせる合奏練習が減り、パートごとの練習が多くなりました。ただ、現状に落ち込んだり気を抜いたりせず、限られた時間を有効に使って練習したいです。

  • 粟津 衿奈

    高校1年生
    プレップ総合コース

    クラブの練習は厳しいですが、みんなでひとつの曲を演奏する一体感や、演奏後の達成感はとても大きいです。全国一斉休校が始まって、定期演奏会も中止になり、自宅でひとりでトランペットを練習する日々が続きました。そんな中、リモートで「負けないで」を演奏することが決まり、今までにない形で、演奏を届けることができたと思います。

  • 岡村 有素

    高校2年生
    プレップ総合コース

    休校期間中は集まって練習ができないため、オンラインでみんなの顔を見ながら、今後について話し合いました。今は学校で消毒など感染防止を徹底して練習をしています。今後は2021年4月の定期演奏会に向けて全体練習を増やし、本番では「このクラブをやっていて良かった」と思えるような楽しい演奏ができるように頑張りたいと思います。