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京都桂病院 整形外科
医師 新屋祐希さん

2022.10.07 配信

新屋 祐希

Yuki Shinya

京都桂病院 整形外科
医師

ノートルダム学院小学校、ノートルダム女学院を卒業し、2012年4月京都大学医学部医学科へ進学。諏訪中央病院(研修医)、京都医療センター整形外科(専攻医)、京都大学医学部附属病院整形外科(専攻医)を経て、2022年4月より京都桂病院整形外科(専攻医)。

小学生から12年間をノートルダムで過ごし、現在は京都桂病院の整形外科医として働く新屋祐希さん。
ノートルダム女学院時代に経験した1年間のアメリカ留学、そして、研修医時代を過ごした諏訪中央病院での経験を経て、いま思うことをお聞きしました。

〈いま〉
両親の背中を見て育ち自らも医師をめざすように

京都市西部に位置する京都桂病院で、整形外科医として勤務する新屋さん。
「父は内科医、母は皮膚科医として、京都市内でクリニックを開業しています。子どものころから往診について行くなど、両親の働く姿を見て育ったため、自分にとって最も身近な職業が医師でした。また、子どものころから家族で登山やスキーに行くことが多く、山が好き。山で身体を動かすことも好きなので、さまざまな診療科の中でも、運動器に関わる整形外科医を志すようになりました」。
いまは、登山道や林道など舗装されていない場所を走るトレイルランニングに熱中しており、大会にも頻繁に参加しているという。
「最初は3km走るのが限界でしたが、徐々に走れる距離が伸びていき、120kmを2日間かけて走り切るようなロングトレイルやアルプス縦走にもチャレンジできるようになりました。トレイルランニングは、景色のよさと爽快感が魅力。また、山に行くと、山の大きさに圧倒され、自分の小ささを自覚できるのもよいところ。現実の自分を受け止め、いま自分にできることと、いま自分がすべきことに集中しようと思えます」。

トレイルランニングを楽しむ新屋さん

〈原点〉
セントルイスで気づいた学ぶことの意味

高校1年生の夏から1年間、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスのNotre Dame High School に留学。この高校は、ノートルダム女学院の母体となった修道女会の姉妹校だ。ここでの経験が、現在の新屋さんを形づくっている。
「単純に楽しそうだなと思ったのが、留学を希望したきっかけです。単位互換制度があり、留学後に留年の必要がないこともメリットでした。ホームステイし、現地の生徒たちと一緒に通常の授業を受けました。大変だったのは、やはり英語力です。留学前は英検2級程度。留学当初はネイティブの発音が耳に入ってこず、苦労しました。授業の単位を落としたくはなかったので、授業についていくため、毎日必死で勉強しました。そんな否が応でも勉強しないといけない状態が続いたある日、「点」だった知識が「線」につながり、さらには「面」になり、自分の世界がどんどん広がり豊かになっていく感動を経験しました。学ぶことの意味を知り、以来、自主的に勉強できるようになったと思います。ちなみに、英語力は、帰国後には英検準1級程度に伸びていました」。
帰国した高校2年生の夏からは、医学部の受験を見据えた勉強にシフトする。
「1年間のブランクを埋めるため、放課後にはノートルダム女学院の先生方が個別に補習をしてくださいました。自分自身でも、平日は夜遅くまで、休日は朝から夜まで勉強に集中。模試の結果はずっとE判定でしたが、なんとか志望通り、京都大学医学部へ進学することができました」。

Notre Dame High Schoolの仲間たちと

〈ターニングポイント〉
地域医療の先駆け諏訪中央病院での初期研修

大学卒業後の初期研修では、長野県茅野市にある諏訪中央病院へ赴任した。この病院は、鎌田實さんが名誉院長を務めており、地域医療に興味を持つ若い医師が数多く集まることで知られている。
「2年間の研修では、地域診療や訪問診療も行いました。ここでは医師は「どうやったら春に田植えができるようになるだろう」「どうやったら家に帰って、家族と温泉に入ることができるだろう」と、患者さんの病気だけを診るのではなく、患者さんを“人生を生きる個人”としてとらえて治療にあたっていました。私も研修医ではありましたが、担当医としてではなく主治医として患者さんと関わりました。そして、医療は決して病院で完結するものではないこと、人生・生活の中で人を支えるひとつの手段・選択肢であることを学びました」。
また、初期研修時代に冬休みを利用して行ったスリランカでも、大きな学びがあったという。
「ヘルスケアのアプローチとしての代替医療に興味があり、アーユルヴェーダを体験するためスリランカの治療院に滞在しました。ヨガやシロダーラなど自分というものに集中する日々の中で、改めて自分の生き方を見つめ直しました。そこで考えたのは、自分は偽善者なのではないかということ。社会的に信頼があって安定していて、「人のため」になるといわれる職業に就いて働き始めた自分。でも、いままでしてきた努力は「人のため」ではなく、自分が他者からよい評価をえたいというよこしまな欲求のためだったのではないか。そう思い至り、自分のための努力を誇れなくなったのです」。
しかし、さらに思考を巡らせて、自分のための努力を肯定できるようになる。
「今後は、他者の目を気にするのではなく、自分の興味や自分がやりたいことに素直に生きよう、と。その結果が、誰かのためになるなら、こんな素晴らしいことはないのではないかと思うようになったのです」。

〈いま、私にできること〉
日々研鑽。山岳医療やスポーツ医学も学びたい

現在は医師として、病院で外来診療や手術に携わる新屋さん。「痛みがなくなりました」「歩けるようになりました」といって笑顔を見せる患者さんの姿を見るのがやりがいという。
「整形外科医として、いつも人々の運動器に目を向けていますが、これほど精巧で緻密な美しいつくりがあるだろうか、と身体の仕組みにはいつも感動しています。また、整形外科は、基本的に元気な患者さんが多く、治療でよくなる患者さんが多いところも魅力です。ただ、現状の治療といえば、「湿布か手術か」という選択肢しか提示できない場面も多く、そういうときは無力さを感じます」。
今後は、日々の臨床に加えて、自分自身が熱中しているトレイルランニングに関わる医療として、山岳医療やスポーツ医学についても学びを深めていきたいと考えている。
「自分自身が心から興味を持って学ぶことが何より大切だと思うので、パッションと好奇心を持ち続けたいと思います」。
新屋さんの世界は医学の分野を中心にこれからも広がり続け、その知識と技術は患者さんへとフィードバックされていく。

京都桂病院整形外科でともに働くメンバー