ノートルダム女学院の
教育と社会を結ぶ交差点

卒業生・在校生の活躍

ポーランドで直面した
ウクライナ危機
市民レベルでできる
難民支援とは?

上智大学 総合グローバル学部
石田瑠梨さん

2022.10.07 配信

石田 瑠梨

Ruri Ishida

上智大学
総合グローバル学部

ノートルダム女学院での学びがきっかけで貧困問題に関心を持ち、2019年4月上智大学総合グローバル学部入学。2021年9月から1年間ポーランドへ留学し、ウクライナ避難民の生活を支援するボランティアに携わる。

上智大学総合グローバル学部へ進学した石田瑠梨さん。
1年間のポーランド留学中に、ロシアによる隣国ウクライナへの侵攻が始まりました。
石田さんは現地で何を考え、どう行動したのか、そして社会人となってからも続けていきたい活動についてお聞きしました。

〈いま〉
貧困問題について学ぶため上智大学総合グローバル学部へ

石田さんは貧困問題について学ぶため上智大学総合グローバル学部へ進学した。
「高校時代のフィリピン社会活動ワークショップの経験などから貧困問題に関心を抱き、大学で学びたいと考えました。総合グローバル学部は、領域(国際関係、政治、市民社会、国際協力)という“グローバルな観点”と地域(アジア、中東、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ)という“ローカルな観点”の両方を持ち合わせて学ぶことが可能であり、貧困という特定の地域と社会問題について学びたいと考えた私にとって最適な環境でした」。
大学のプログラムでカメルーン短期研修などを経て、2021年9月29日から約1年間、ポーランド南部・クラクフのJagiellonian University(ヤギュロニアン大学)International and Political Science(政治学科)へ留学する。
「ポーランドは、ヨーロッパ地域研究を深掘りするうえで最適な場所です。留学先のクラクフという地域にはアウシュビッツ強制収容所があります。現代のヨーロッパ地域の問題や社会を研究するうえで、ホロコーストというヨーロッパ全体が共有する歴史を学ぶことは非常に重要なことです。多くの国と隣り合っていることから、ヨーロッパ各国から留学生が集まり、多様な人々と関われる点も魅力でした」。
現地の大学では、主にヨーロッパ地域研究に関する授業を受講していたという。
「たとえば、EUの文化プロジェクトや、20世紀のヨーロッパ思想、ヨーロッパの遺産と人類学に関する授業などを受講。そのほかにも、世界の経済的・社会的な問題、食糧危機についても学びました。ポーランドならではの学びとしては、ホロコーストに関する授業とポーランド語講座も受けました」。

〈原点〉
高校2年生で参加したフィリピン社会活動ワークショップ

石田さんが上智大学へ進学するきっかけとなった高校時代のフィリピン社会活動ワークショップでの体験とは、どのようなものだったのだろうか。
「フィリピンでは、貧困問題や人身売買、性的搾取、経済的格差という問題を目の当たりにしました。そして、彼ら彼女らのために自分ができることは何か、と考えるようになりました。このワークショップ以降、世界の貧困問題についてもっと知りたいと思うようになり、高校2年生の夏休みにはインドにあるマザーテレサの施設でボランティア活動に参加。高校のLiDの授業(自分の関心事を集中的に研究する授業)では、「日本の子どもの貧困」をテーマに研究し、論文にまとめました」。

フィリピンの先住民族の村を訪問

〈ターニングポイント〉
多くのボランティア経験を活かしポーランドでウクライナ難民を支援

留学開始から5カ月が経った2022年2月、ロシアのウクライナへの侵攻が始まる。石田さんは、すぐさまポーランドで活動を開始した。
「クラクフ市文化センターに設置された配給所で、週に1回ほどボランティア活動をしました。配給所では、食料、赤ちゃん用品、子どもの玩具、洗剤、シャンプー、ティッシュなどの生活必需品をウクライナ避難民の方に提供していました。私の仕事は、既製品を一度開封して、二、三等分に中身を小分けする作業でした。そうすることで、より多くの人に物資が行き渡るからです。配給所には、1日に数回大きなトラックや自家用車がやってきます。市民がクラウドファンディングや寄付金で得た資金を利用して物資を大量購入し、配給所に寄付します。届いた物資を建物の中に運び、整理するという作業も行いました」。
現地では、ボランティア参加者に対する支援の充実ぶりに驚いたという。
「ボランティア活動をした人は、配給所の前にある食堂にて無料で食事ができるんです。街の人々がウクライナ避難民の方だけでなく、ボランティア活動に従事する人々も応援している点に驚きました」。
また、そのほかにも石田さんは、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのユースメンバーであることを活かして、日本の人々に向けてポーランドのウクライナ難民支援について紹介するオンラインイベントを実施。自らがボランティア活動をしていた団体とフリー・ザ・チルドレン・ジャパンをつなげ、日本からの寄付金を受け取れる仕組みづくりなどの活動も行った。

ポーランドの配給所でのボランティア

〈私を動かすもの〉
目の前の人々のために自分にできることを行動に

帰国後、「市民レベルでいかに移民・難民を継続的に支援できるか」というテーマを掲げて上智大学で研究を継続。
「留学先のポーランドで、大規模なウクライナ避難民の受け入れによって、支援に関わる多くの市民が自らの生活や時間を犠牲にすることを余儀なくされている状況を目の当たりにし、継続的な支援方法の探求が急務だと考えこのテーマを掲げました。またヨーロッパでは、2015年の欧州難民危機をはじめ、移民・難民に関する課題が常にあること、ポーランドでは昨年からベラルーシ移民排斥が問題になっていることを受けて、「移民・難民」に焦点を当てることに決めました。留学中は、現地のポーランド人にインタビューを行い、ウクライナ避難民受け入れや、移民・難民排斥を掲げる政策に対する意見調査を行いました」。
労を惜しまず行動を起こす石田さん。行動することで感じることは、何なのだろうか。
「新しいことに挑戦するたびに、自分自身の考え方や価値観が形成されていきました。教科書や本で見聞きした情報とは違う、実際に行動したからこそわかる情報というものがあるんです。自分が無知であることを自覚し、恐れずに、そして探究心や好奇心を持って行動することが大切だと考えています」。
2023年4月からは、40以上の国と地域でグローバルな事業展開を進める電機・通信機器メーカーへの就職が決まっている。
「ポーランド留学の経験を活かして、海外と日本をつなげる役割を担いたいと考えています。もちろんこれからも、一市民として自分に何ができるのを、いつも考えながら行動を起こせる人間でありたいと思います」。

クラクフでは連日抗議集会が開かれていた