ノートルダム女学院の
教育と社会を結ぶ交差点

特長的なカリキュラム

新聞やニュースの情報は真実か?

国際情報分析

2022.06.21 配信

主体的に情報を獲得し、論理的思考力を養う
自ら学ぶことの奥深さとよろこびに出会う

グローバル英語コースでは、高校2年次に「国際情報分析 -Information Analysis 5Stages & 5Actions-」という1泊2日の合宿研修を行っている。これは、関西学院大学国際学部 關谷武司教授が開発した大学生向け教育プログラムを、高校生向けにアレンジしたもの。2017年に「高校生に大学での学び方を体験させたい」という思いから始められ、すでに6年目を迎えている。

5つのステージと5つのアクションで
真実を見極めるための情報分析を学ぶ

このプログラムが目指すゴールは、情報を主体的に分析・評価し、最終的には自分自身の考えを論理的に構築する力を身につけることにある。「情報社会」も今は昔、いまやそれを飛び越えて「Society5.0」時代が到来するとも言われる。一方で、そこに飛び交う情報は本当に正しいのか? Webサイトに限らず、テレビや新聞、専門書籍や教科書に書かれている情報ですら、必ずしも真実とは言い切れない。

味方となるはずの情報も、間違っていれば、あるいは恣意的に歪められたものならば害となる。いやがうえにも降り注がれる情報を鵜呑みにするのではなく、真実は何なのか? 情報を見極め、適切に判断・取捨選択し、それに基づき自ら意思を持った行動へと組み立てていける力、主体的・能動的に情報を獲得し活用できる力が、いま求められている。
では、どうすればその力は養えるのか? このプログラムでは、情報分析のための「5つのステージと5つのアクション」を設定し、常にそれを意識した思考プロセスに習熟することで、その力を習得させる(下図参照)。

沸き立つ疑問をエネルギーにして
「教わる」ではなく、自ら「学ぶ」

この1泊2日のプログラムを時系列で追ってみよう(上表参照)。
冒頭には導入があり、あらかじめ用意された複数の課題が示される。この課題の質がプログラムの成否を左右する。ニュースなどで聞いたことはあるが詳しくは知らない、ほどよく近くて遠い課題。高校生が2日間で一定レベルの結論まで導き出せる、大きすぎず小さすぎない課題だ。2021年はテーマに「新型コロナ」が設定された。

2日目に行われるプレゼンに向けて、5〜6人程度のグループに分かれ、5つのステージと5つのアクションを意識しながらワークを進めていく。

初日午前中に行うのは、課題に関する情報を偏りなく集め、結論を導くための鍵となる「キー情報」を抽出するワークだ。

午後は、メンバーで手分けして、キー情報に関連する情報を繰り返し収集しながら分析していく。このころから、生徒の表情は熱を帯び始める。言い直せばそれは、「混乱」を示すサインとも言える。

たとえば、「若い人もワクチンを打つべき」とする情報Aがある。一方で「若い人はワクチンを打たない方がよい」とする情報Bもある。一人の生徒はAを探しあて、別の生徒はBにたどり着く。当然、なぜこれほど結論が異なるのか?という疑問が生まれる。「それは誰が言うてるん?」「どんな根拠?」「自分の利益のために言うてるんと違う?」「若い人と高齢者でワクチンを打つリスクって何が違う?」「そもそも『副反応』って何で、『若い人』って何歳?」。疑問を解消しようと調べるほどに、疑問の枝葉は拡がり情報の森に迷い込む。

そうしたやり取りを横で見守る人がいる。生徒たちの思考をガイドする「アシスタント」だ。生徒が安易に情報に納得すれば「それ、ホンマ?」と突っ込みを入れ、思考が行き詰まれば「こっちの視点からも調べてみたら?」と視野を広げる。硬軟・緩急織り交ぜた「問い」を発しながら、生徒の思考のベクトルの向きや長さを整えていく。
夕食後には、プログラム最大の山場がやってくる。グループの結論をまとめるワークだ。これまで半日かけて集めた膨大な情報がある。その一つひとつへの信頼度はメンバーそれぞれに違う。どんな結論に到達するのか? 論拠はどう組み立てるのか? そのためにはどの情報を残し、捨てるのか? 喧々諤々の討論を繰り広げ、パワーポイントに落とし込んでいく。

そして、2日目。プレゼン資料を完成させ、リハーサルを経て発表へ。厳しい質問攻めにも応答し、全グループの発表が終われば、27時間に及ぶプログラムは終了となる。

この1泊2日で、生徒には「ある変化」が起こる。それは「学び」に向かう意識の変化、つまり「学びの自分ごと化」だ。明日には絶対にプレゼンしなければならないという高い緊張感のなかに置かれながらも、次々に湧いてくる疑問。それを解決したい、だから調べたいと思う探求心の芽生え。「教わる」ではなく「学ぶ」。自分の中に沸き立つ疑問をエネルギーにして、自ら学ぶ旅に出る。
「自走する学び」のおもしろさと喜びに出会う。それもこのプログラムを通じて得ることができる大きな成果なのだ。

担当教員VOICE

  • 霜田慶介

    Keisuke Shimoda

    社会科

    生徒たちの、学びに対する姿勢が
    変容していく様子にいつも驚かされます

    国際情報分析のプログラムには、主体的・対話的、そして、深い学びのすべてが入っています。従来の知識・記憶型の学習ではなく、アクティブラーニングやクリティカルシンキングが授業で取り入れられるようになってきましたが、実のところ、それをどうやって行えばいいか苦慮しているのも事実です。
    このプログラムにはその方法が示されています。答えのない問題に対し、さまざまな情報を収集し、仮説を立て、5つのステージと5つのアクションを使ってそれを論理的・批判的・対話的に分析していきます。
    合宿形式のこのプログラムは精神的にも体力的にもかなりハードです。しかし、これを乗り越えることで、学ぶことの本当の楽しさ、素晴らしさを知ることができると思います。プログラムの最後にプレゼンテーションを行うのですが、そのレベルと生徒たちの熱量にはいつも驚かされます。