ノートルダム女学院中学高等学校の一角にたたずむ和中庵。洋館と和風の奥座敷からなるこの大正モダン建築・和中庵にて、「光彫り」で幻想的な世界を表現するゆるかわふう氏の作品展が開かれました。この作品展開催にあたり、「日常のなかで芸術に触れる」ことの大切さや尊さについて、ゆるかわふう氏と学校長・栗本嘉子と語り合いました。
栗本作品展は大盛況でしたね。こんなに素敵な作品展を和中庵で開いていただき、本当にありがとうございました。
ゆるかわこちらこそ、和中庵を使わせていただきありがとうございました。今回は和中庵の建築美も堪能していただきたかったので、1回の入場は20名限定とし、計20回・400名分のチケットを用意しました。ところが民放の情報番組の生放送で取り上げられ、その放送が流れている間にチケットは完売。かつてない反響で、私自身も驚きました。
栗本作品展開催に先立ち、プロデューサーの方から「和中庵をお借りしたい」と打診をいただいた時、「まずは実際に作品を拝見してから判断したい」とお伝えしました。そこで訪ねたのが、湯河原のゆるかわさんのアトリエです。
ゆるかわはい、正直驚きましたよ。まさか校長先生が自ら足を運んでくださるとは思ってなかったもので(笑)。
栗本驚いたのは私です。青く深く光る虎の作品の前に立った時、言葉を失いました。さらには、後ろからあてられた照明が落ちたとき、そこに出てきたのは、彫刻が施された発泡断熱材のみ。種あかしをされて、もう一度驚きました。
ゆるかわ不思議ですよね。特別な材料は何ひとつ使ってない。使っているのは、近所のホームセンターでも売っている発泡断熱材・スタイロフォームですから。
栗本今回、特に私にとって感慨深い作品は「桜」でした。和中庵には、毎年きれいに咲き乱れる樹齢200年の桜があったのです。しかし、老衰で倒れる危険があったため、泣く泣く伐採することに。10年ほど前のことです。作品展で、和中庵の奥座敷で光る「桜」の前に座った時、「あぁ、あの和中庵の桜がここに帰ってきてくれたのだ」と心から感動しました。
ゆるかわ逆に私は、和中庵の歴史をお聞きした時、その歴史の奥行きに胸が詰まりました。修道院だったのですね。
栗本はい。ここは私たちノートルダム女学院の原点です。1948年、アメリカ・セントルイスから4人のシスターが、日本にキリスト教の普遍的な教えにもとづく女子教育の拠点をつくるため、海を渡って来られました。和中庵は、そのシスターたちの修道の場であり、住み家です。ここが私たちの歴史の始まりです。
目の前に本物の虎やウサギがいるようなリアルな繊細さに驚き、照明を消したときに現れる無骨な断熱材にもう一度びっくり。いろんな彫刻刀を使って彫る「一発勝負の彫刻」と聞いて3度目のびっくりでした。