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3年目を迎える「グローバル英語コース」

3年目を迎える「グローバル英語コース」

グローバル英語コース長 中村良平

 

自らの思い・考えを自在に伝え合える「高い英語力」と、国境にとらわれない広く開かれた視野を備えた「豊かなグローバルマインド」を育てることを目指し、さまざまな先駆的な学びに取り組んでいる「グローバル英語コース」はいよいよ3年目を迎え、中学1年から高校3年まですべての学年に展開することになります。2016年度のスタート以来、生徒たちの日々のがんばり、保護者の皆様や本コースを支えてくださる関係者の皆様のおかげで、飛躍的な成長を遂げることができました。本稿では、その成長・成果を紹介するとともに、グローバル英語コースの多様な取り組みについて知っていただければと思います。

 

世界と語り合う力を身につける

国際関係の変化、IT技術の進化に伴って、世界全体が国境を越えて密接につながっていく。そうやってますますグローバル化が進むいま、世界を舞台に活躍するのに必要なスキルを身につけることは大きな意味を持ちます。そのなかでも、事実上の世界共通語である英語を自由自在に使いこなし、自分の想い・考えを伝え、他者を理解し、言語や文化の違いを超えて協働できる力は、これからの社会を担う中高生に必須であると言えます。グローバル英語コースの生徒たちは、高い英語力の習得、つまり日常会話だけでなく抽象的な議論を伴うようなあらゆるコンテキストのなかで、英語を使って互いに想い・考えを伝えあう力を身につけることを目指して、日々学習に取り組んでいます。

具体的な到達目標としては、中学卒業時に英検準2級以上、高校卒業時に英検準1級以上の英語力を習得することを目指しています。その成果は早くも英検の合格実績に表れ始めています。2017年12月現在で、1期生は以下のグラフに示すように着実に成果を上げています。彼女たち1期生のさらなる成長、そして、そのあとに続く後輩たちの成長に大いにご期待ください。

 

 

ただ、ここで一つ補足しておきたいことは、英検合格は英語力の高さを示す一つの指標に過ぎず、グローバル英語コースで身につける英語力はもっと幅広いものだということです。たとえば、ある授業では、ICTを最大限に活用して、自ら情報収集し、考えたことをスライドにまとめてプレゼンテーションをする力を徹底的に鍛えます。生徒たちは英検合格を目標の一つとしながらも、発信力・思考力・創造力の育成を重視した先進的な英語授業を通して、幅広く英語を使いこなす力を身につけていきます。

 

 

豊かなグローバルマインドを育む

ところで、英語力を高めることは重要ですが、それだけで世界・社会に貢献する人になれるのでしょうか。言語は人と人とが分かり合うための強力なツールではありますが、それだけでは人は分かり合えないし、力を合わせることもできません。グローバル英語コースでは、身につけた高い英語力をどのように活かしていくかをこの中高時代にしっかりと考えていきます。グローバルや国際を標榜する学校・プログラムが多数あるなかで、ノートルダム女学院で学んだ生徒たちには、弱い立場に置かれている人々に対する眼差しもしっかりと持ち、メディアからの情報に流されるのではなく、自分の目で見て自分の頭でよく考え、冷静に判断して正しく行動できる人になってほしい。そういった考えをもとに、グローバル英語コースではさまざまな取り組みを取り入れています。なかでも、グローバル英語コース高校2年が素晴らしい体験を重ねたフィリピン社会活動研修はその最たる例と言えます。(2017年度の高2フィリピン研修の報告はこちら

 

 

グローバルワークショップで展開する 主体的な学び

グローバル化が進むなか、世界では地球規模で取り組むべき課題が山積しています。グローバルワークショップはそういった地球規模の課題に目を向け、地球市民としての自覚と行動を促す本校オリジナルの特別授業です。グローバルワークショップで特徴的なのは「教科・学校という枠を越えた学び」です。大学・企業・NPO・公益財団法人などの各種団体にご協力いただき、学校外の講師による特別講演やワークショップ、校外学習の実施を通して、社会とのつながりを大切にした学びを実現しています。社会・世界とのつながりをなくして、社会・世界を知ることはできない。未来へはばたくために、まずは社会・世界とつながる。日々の学びを活かして、考えを深め、行動する。それがこの授業の目指すところです。

 

高校1年では「世界を知る。日本を知る。」をテーマに、日本人としての確固としたアイデンティティを持ち、また、世界の多様性を受容する心を育てます。これは、高校1年の3学期に生徒たちが経験するカナダでの3か月留学プログラムへの準備にもなっています。カナダで3か月を過ごすあいだに、日本の伝統文化はもちろん、政治や歴史、社会制度、生活習慣などさまざまなことについて「日本ではどうなの?」「日本の人たちはどう考えているの?」「あなたはどう思う?」などと問われることが多々あります。出発までの学びを通してきちんと議論できることもあれば、それでも自分で納得できる議論ができない悔しい場面も経験します。こうして、この3か月の留学のなかでグローバルワークショップでの学びが実体験を伴って強化されます。

 

高校2・3年では、グローバルワークショップA(GWA)とグローバルワークショップB(GWB)の2科目体制をとり、GWAでは「学びを行動につなぐ」を、GWBでは「世界について英語で学び、考え、伝えあう」を目標に学びます。これらが最終的に目指すのは、グローバル英語コースが育成したい女性像と完全に一致します。つまり、日本を含む世界の現状をよく理解し、必要な情報と課題を自ら発見し、課題解決のために協働しながら行動するという姿です。

 

とくにGWAの学びは、他にあまり例を見ない特徴的なものです。GWAの目標「学びを行動につなぐ」は、学びが大変重要であることは当然のことである一方、どれだけ学んでも、学ぶだけで終わっていては世界は何も変わらない、すなわち、学んだことを生かして世界と関わっていくことの大切さを表します。授業では、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)をベースに世界のさまざまな課題に目を向け、その解決のために自分たちに何ができるかを考えます。ここまでならば、多くの学校でもよく似た取り組みを見ることができます。しかし、本校のグローバル英語コースではさらに、協力いただける企業・団体・機関とともにそれを実行に移していきます。机上の空論では終わらせることなく、計画を実現に運ぶ過程のなかで、「産みの苦しみ」とも呼べるような、さまざまな課題・困難に遭遇します。教員はいつも傍でサポートする一方で、計画の遂行に直接かかわることはしません。多くの方々の協力をいただきながら、みんなで知恵を絞ってそれらを一つ一つ解決していく。アイデアを現実のものとしていく。そうして、生徒たち自身が課題解決力や行動力を身につけていく。一人ひとりがこのように成長していく様を、私たち教員はこの1年、目の当たりにしてきました。

以下、具体的な取り組みを簡単いその一部を紹介します。

 

(1) ごみ減量への取り組み
増大するゴミ排出量という課題に目を向けた生徒たちが、広い年代にゴミ問題をもっと認知してもらいゴミ減量につなげる取り組みとして、スターバックスジャパン様とともにイベントでの広報活動やポスター等の制作を実施。

 

(2) マイボトル利用の推進
コーヒーなどの飲み物を買うたびに使い捨てのカップを使うのではなく、繰り返し使用可能な「マイボトル」を普及させるために、京都市とともに取り組みを実施。

 

(3) 食料廃棄問題と食料不足の解消を目指した取り組み
廃棄される可能性のある、まだ食べられる食材を校内で集め、NPO団体に寄付する取り組みを実施。

 

(4) フェアトレードの普及・認知度向上
若い女性に受け入れられるフェアトレードフルーツティー FruiTeaマカイバリジャパン様・ピープルツリー様の協力によって開発。

 

(5) 「国際・貧困・教育」をキーワードにした活動
フェアトレード商品を販売するコンセプトショップをマルシェに出店し、売り上げを貧困地域の教育支援に取り組むNGO団体に寄付する一方、日本国内の子どもたちに世界の現状を伝えるワークショップを企画。

 

ご覧いただいてわかるように、教員が主導するのではなく、生徒たちが自ら考えてアイデアを持ち寄った結果、本当に多様なプロジェクトが生まれました。その多様さにかかわらず共通しているのは、誰かから与えられた計画ではなく、自分たちが課題だと思う事象に向き合い、解決策を考え、その実現に協力していただける企業・団体などを探し出し、慣れない電話やメールを使って自分たちで連絡をとって折衝する。そして、幾多の困難を乗り越えて得られるのは、開発できた商品や開催できたイベントといった直接的な成果もさることながら、行動する力、課題に直面してもあきらめずに乗り越えていく力、そして、よく考え、力を合わせて行動すれば、たとえ小さくとも世界・社会を変えることができるという自信です。

 

 

 

 グローバルワークショップでは、一人ひとりが社会・世界について広く知り、深く考え、自分自身の信念を持って行動できる「ぶれない自分軸を持ったグローバル人材」の育成を目指しています。現在、本授業は高校生対象に開講していますが、2018年度からはこのエッセンスを取り入れた中学生向け特別授業「地球市民プロジェクト」(つばさ科のなかで実施)がスタートします。

 

 

 

北米・アジア・ヨーロッパ! 世界へ一歩踏み出す!

 グローバル英語コースでは、多感な中学生・高校生の時期に多様な世界へと飛び出し、こころとカラダで異文化を体感することで、広い視野と豊かなグローバルマインド、そして高い英語コミュニケーション力をもつ女性を育てます。そういった趣旨から、研修先を1つの地域に限定せず、アメリカ・ヨーロッパ・アジアと異なる地域・文化圏を訪れます。これは、他校にはあまり見られないユニークな点です。

 

 

個々の研修内容については別の機会に譲ることにしますが、海外研修プログラムの根底にある考え方を述べるならば、語学力の伸長を目指すのはもちろんのことですが、それだけでなく、学年が上がるにつれ、身につけた英語力を活かして、自分のことばで世界と語り、よりよく世界を知ることを目指しています。一つ取り上げますと、グローバル英語コース高校2年生を対象としたフィリピン研修では、カトリック教会のシスター方、現地の大学生、先住民族の方々、スラム街に住む方々、貧困や劣悪な生活環境から救出された子どもたちなど、さまざまな立場にある方々と交流・対話をしますが、通訳がつくわけではありません。自分の英語力を駆使して語り合い、学んでいくのです。そうして、慣れ親しんだ環境を離れ、直接現地に足を踏み入れ、目で見て肌で感じて、言葉を交わしながら新しい学びを得ていく。これがグローバル英語コースの海外研修の本質です。

 

Pick up:  高2フィリピン研修  


このプログラムでは、フィリピンで長年にわたりストリートチルドレンや先住民族など弱い立場に置かれた人々を支える活動をされているNPO団体PREDA foundationを訪れ、シェイ・カレン神父様と会ったほか、実際に支援を受けている子どもたちや先住民族から話しを聞いたり交流を図ったりすることができました。さらに、マニラ市内のスラム街ホームビジットや、フィリピンのトップ大学であるフィリピン大学学生との交流、カルメル修道女会併設小学校の訪問など、1週間という限られた時間のなかで、生徒たちはさまざまな得がたい体験をし、フィリピンの方々の温かさを感じながら、多くの学びを得ました。参加した生徒からは「改めて考えさせられる」「いままでの価値観が変わる」「普段の生活のなかで、私たちはいろいろ悩むけど、悩めること自体が幸せなのだと思った」「人の温かさをすごく感じた」などの声が聞かれました。  なお、本プログラムの実現に際して、PREDA foundationと20年近くパートナーとして共に活動されているNPO団体 Free the Children Japan、そして、フィリピン大学学生との交流については(公財)大阪国際交流センターの協力をいただきました。

 

 

最後に

このように、「高い英語力」と「豊かなグローバルマインド」を育てることを二本の柱に、先進的な教育プログラムを提供しているグローバル英語コースは、2016年度のスタート以来、着実に歩みを進めることができました。それはひとえに、本コースで学ぶ生徒たち、保護者の皆様、そして、本コースの学びを支えてくださる大学・団体・企業等の方々のおかげであります。

2019年春には初の卒業生が次のステージへと羽ばたいていくことになります。今年度もグローバル英語コース生の活躍に、どうぞご注目ご期待ください。そして、今後とも皆様の変わらぬご支援をいただけると幸甚に存じます。

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