ノートルダム女学院中学校 2024年度 卒業式 式辞

ノートルダム女学院中学校 2024年度卒業式 式辞

2025年3月19

 

学校長 栗本嘉子

 

 

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様、高いところからではございますが、お嬢様のご卒業、誠におめでとうございます。3年間、ノートルダム教育に共感し、信頼してご同伴頂いたことを、心より感謝申し上げます。また本日は、カトリック桃山教会の菅原友明神父様を始めとするご来賓の皆様、本日はご多用の中、ご来校賜り、誠にありがとうございます。

 

 3月上旬、私はイタリアはローマにおりました。ノートルダム教育修道女会がローマ総本部で主催した、グローバル・エデュケーション・コミッションという国際会議に出席していたからです。およそ20人のメンバーは、アメリカ、ブラジル、ポーランド、ドイツ、ハンガリー、ナイジェリア、チェコ・リパブリック、ケニア、ホンジュラス、イタリア、スロバニア、そして日本からは私、と、世界各国からのノートルダム教育に携わる人々が集い、まさにグルーバルと言える会議でした。皆、それぞれの国、固有の文化の中で学校をもちながら、マザーテレジア・ゲルハルディンガーという共通の創立者をもっています。その意味では、国と国の違いの大きさよりも、同じ方向に向かう強い「絆」を感じ、精神的につながっているという実感をもつことができました。私はこれまで、ホンジュラスや、チェコやスロバニアの方々とお話しした経験がありませんでしたが、寝食を共にしながら日々を送り、私たちノートルダムが行ってきた教育とは何だったのか、これから行おうとする未来の教育の姿は何かということについて、話し合いを続けました。会議が始まって三日ほど経ち、会議のファシリテーターが、我々にこう言われました。「もう三日も話し合いを続けているのだから、お互いがお互いのことをいろいろわかり始めている頃でしょう。今からすべての人とペアになり、この人のいいなぁと思う点、強みだと感じるポイントについて、その方に知らせてあげてほしい、そうすれば、私たちはもっともっと強くて素敵な共同体になる、と言われました。そして、私たち20人は、自分以外の19人のところに個別に行き来し、これまでのあらゆる場面で、その人が素敵だと思ったことをたくさん話しました。それまでに何の前情報もなく、自分が出会い、感じたことがらだけを頼りにその人の良いことを見出すことができるのだろうか、と少し不安になりましたが、案じることはなく、もう三日も共に時を過ごし、同じものを食べているその人の目を見て向き合ってみると、それぞれに素晴らしいと思う点がどんどん見えてきました。二つのことを感じました。一つめは、お互い知らないと思っていたのに、随分と分かり合っているものだという気づき、つまり相手の良さを既に知っているということ。そして二つめは、それを言葉にしたら、それはお互いの信頼感を強め、その人自身の力になるのだ、ということです。すなわち、一人ひとりの足りないところではなく、良いところにフォーカスを当てて、それを言葉にすれば、相手も自分も、より素敵になる。信じ合えて、肯定し合えて、そして、異なる意見を述べても尚受け入れられる。そしてどんどんよいグループ、強い絆をもつ共同体になっていく、そのような確信をもてたのでした。そして、その活動の後、また、会議の本題に戻りましたが、これまで以上に信頼感が強まり、これまで以上に安心感をもって、お互いに考えを述べ合うことができる事実に少し驚いたぐらいでした。私たちのこの共同体による関わりは、この一回の集まりで終わるものではなく、これから数年続くものです。次からはオンラインとなりますが、その貴重なスタートに、このような信頼感の構築は、不可欠であると皆が感じた次第です。
 

 IT化と人口知能が加速度的に進化し、これまでの知識や技能のみにもはや頼ることができない時代のただ中に生きていたとしても、この、人と人が共にあって、そこで得ることのできる絆、そして、そこから生まれ出る安心感と信頼感は、どれほど素晴らしい働きをしてくれるAIであろうとも真似のできないことでしょう。それは、温かい体温をもった人々が、微笑み合い、「共に生きる」ことによってのみ達成される心と心のつながりです。先日、あるお寺を訪問した際に、次の言葉に出会いました。「社会に慈しみを、そして世界に共生(ともいき)を」。普段、我々が「きょうせい」と読む漢字に、「ともいき」と読み仮名がふられていました。「世界に共生(ともいき)を」とは、世界中の生きとし生けるものは、つながり合って一緒に生きよう、という呼びかけだと、私は受け取りました。「ともいき」という音は、「共に生きる」ことが分かりやすく連想でき、響きにも優しさがあります。共に生きることによって、社会はもっとずっと優しくなり、慈しみ深くあれる。そうではないでしょうか。
 

 最後に、本校の宝であるミッション・コミットメント、これを皆さんの中学のご卒業に際して、今一度思い起こされるようにお勧めいたします。マリア様に倣って、すべてを尊び、心を込めて対話し、心を開いて共感すること。そして、人々の幸せとこの地球の平和の為に歩み始めること。そのことを改めて、一日ごとに、丁寧に行ってみてください。そうすることによって、皆さんは慈しみ深く、お互い共に生き合い、わたしたちの学校がよりよい共同体となり、その中で、皆さんは神様のことを少しずつ知っていけると信じています。
 

 皆様のご卒業に際して、神様の祝福が豊かにありますよう、心からお祈りをいたします。

前のページに戻る