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高校3年生 自主講座「弁証法と実存主義でみる現代社会」その4

2月18日(火)にご紹介した高校3年生 自主講座「弁証法と実存主義でみる現代社会」の続きをご紹介します。
今回がこの講座の最終回です。
 
《第5回目(2月21日)》
 
 今回、「高3自主講座」最後の話題提供者は、哲学好きのMさんです。
 
 彼女がテーマとして少しギリギリの所で選んできたのが「英語教育」でした。正直どのような展開になるのかなと思いましたが、Mさんの発言の中の「Nativeを目指さない英語教育
」、つまり、少々発音が違っていても、例えばアジアの地域では、それでもお互い通じているし、大切なのはお互いコミュニケーションがとれることだから、発音も含めた英語の習得に膨大な時間をかけるよりは、他のことを学んだ方がいいのではないのかという考えに、とても新鮮なものを感じました。
 また、今回のメンバー全員がグローバル英語コースのため、留学経験があり、話の途中から、自分達の留学体験が主な話題になりました。そして意外なことに、勿論、楽しいことも沢山あったかと思うのですが、メンバー達が語ったのは、むしろ「理不尽な体験
」でした。特にアジア人として白人社会から阻害されているような体験、例えばレストランに入っても、他に席はたくさん空いているのに、トイレの横の席に案内された(この件は、私Mも、前任校で、生徒の海外引率によく行っていた同僚から聞かされたことがありました。)とか、下校中に、現地の中学生の男子達につけられて、口から水を吐かれたとか、また治安の悪い地域を通った時に、つい、そこにいた男性を見てしまったら、追いかけられて必死で逃げたとか。。。
 今となっては、笑いを交えながら語りあえたのですが、まだまだ白人中心主義の中で、非白人である自分が受けた偏見・差別や、男性優位の社会の中で、女性として受ける差別など、結論的に自分達は「二重の差別を受けている
」という話になりました。しかし、これは確かに嫌な経験だけれど、日本の中にいるだけでは知ることのできない貴重な体験だと、メンバーはある意味前向きに受け止めているようで、彼女達のたくましさを私Mは改めて感じました。(しみじみ・・)
 
 そして次に、この「二重の差別」をなくしていくためには、どうすればいいのかという話題になり、そこでやはり「教育だよね」という答えに全員でたどり着きました。また教育で何を教えるのかとなると、やはり「平等の精神」・「お互いを尊重する心」だということにもなり、そこから突き詰めると、教えるべきことは、紛れもない「 愛の精神 」であるという結論に達しました。(う〜ん・・唸る)

 このように今回の自主講座で繰り返される「愛」の重要性に改めて深く思いをめぐらしながら、私達は、いよいよ最後のまとめへと進んでいきました。
 
 この講座は、ヘーゲルのいう絶対精神(神)の本質は「自由」であり、「歴史は自由を展開していく過程である」ということを前提に始まりました。確かにヘーゲルの生きた時代は「自由」が認められていない世界で、「自由」を手に入れることで、人間の幸福・社会の幸福が完成されると考えられていました。しかし、実際に「自由」が実現した世界で始まったことは、人間を幸福にする素晴らしいものも生み出した反面、非常に自己中心的な「自由」も蔓延することになってしまいました。そう考えると、絶対精神(神)の本質は本当に「自由」なのか、という大きな疑問が生まれてくることになり、もし「自由」ではないとしたら、一体何なのか。。。メンバーは考え、そしてその答えを、
 
  「絶対精神の本質は愛である」  

と言わざるを得なくなったのです!さらに神の本質が「愛(アガペー)」だとしたら、「今の社会に起こる様々な矛盾・問題(アンチテーゼ)からどのようことが見えてくるのか?」「問題点(人権・貧困・教育などにおいて)は何か?」「愛の実現のためには、何を解決していけばいいのか?」という様々な「問い」が湧き上がり、さらに「愛の実現」の中での自己の役割自己実現・主体性)として、「私に何ができるのか?」「私はどう生きなければいけないのか?」「私(人間)が生まれて存在している意味は何か?」という究極の「問い」へと私達は向かっていきました。しかしここでメンバーの一人が「私、一人が何かをしたって何も変わらない」という、ある意味よくある例の言葉を発したのです。しかしまさにその時、あの「正義」について言及したSさんが、倫理の授業で学んだ 3.5%という数字  (ハーヴァード大学 政治学者:エリカ・チェノウェスが提唱)を思い出してくれたのです!

 3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると社会が大きく変わるという実際の社会データに基づいた見解
 
 またここぞとばかり、担当教員私Mも「人が変われば世界も変わる(創立者マザーテレジア・ゲルハルディンガーの言葉)」や「大海の一滴」(マザーテレサの言葉)などを怒涛のようにメンバーに浴びせかけ、これから社会へ踏み出そうとするメンバーへ、最後のエールを送ったのでした!!!
 
 このように今回私達は、様々なテーマについてお互いに「対話」を深めていくことができました。私Mを入れた5人という少人数も良かったのだと思います。現実社会の矛盾や混乱、差別などの理不尽なことを体験する中で、それでも自分たちが進まなければいけない「方向」(目指す目的地)を5人全員が何となく、しかし割とはっきりと見つめることができたのではないでしょうか。
 
 この連載を全て読んで下さった方がどれだけいるか(全くいないかも)分からないのですが、高校生が等身大の自分を通して、こんなに深い問いにたどりつけたことに、私Mは教師として本当に何にも代えがたい喜び・やりがいを実感するのでした。そして、「よ〜し、また頑張るぞ〜!!!」と内なる闘志がメラメラと湧き上がってくるのをしみじみと感じました!

 最後まで、読んで頂き、ありがとうございました!!!(終わり)😀

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