高校3年生 自主講座「弁証法と実存主義でみる現代社会」
前回に引き続き、高校3年生自主講座のご紹介です。
今回は、「弁証法と実存主義でみる現代社会」という講座です。
この講座では、18〜19世紀ドイツの哲学者ヘーゲルの唱えた弁証法をもとに、現代社会がどのようにアウフヘーベン(止揚)していくのかを考えつつ、その中での個人の自己実現について、キルケゴールやニーチェの唱えた実存主義を参考に、参加者自身が対話を通して考えていく授業を行っています。
《第1回目(1月24日)》
ドイツ観念論からスタートする哲学の流れを振り返りながら、担当教員と参加生徒(4名)が、対話を通して、現代の様々な出来事について、自由に対話をしました。特にこの日は、トランプ大統領が就任したばかりで、メディアに繰り返し流された、就任演説や、大統領令への署名パフォーマンスが、話題として提供されました。また、生徒の考えもあり、次回からは、一人一人が関心があるテーマをもちより、それについて皆で考えていくという授業スタイルをとることになりました。
《第2回目(1月31日)》
まず、トップバッターとして、話題提供を行ったのは、グローバル英語コース(参加者全員グローバルコースなのですが)のKさんでした。彼女が、テーマとして選んでいたのは「人権」についてで、具体的にはジェノサイドについて考えたいということでした。ジェノサイドといえば、最近もガザ侵攻を報じるニュースなどで、繰り返し流された用語ですが、Kさんは特にホロコーストについて考えたいということでした。これもまた、タイムリーな話題で、1月27日はポーランドのアウシュヴィッツ強制収容者が解放されて、80周年となる日で、ニュースなどを通じて、追悼式典の模様が、報道されていました。私たち(生徒たちと私:担当教員です)は、まずホロコーストが起こった原因について、歴史を思い出すことから出発し、第一次世界大戦後のドイツで何があったのか、なぜナチズムが支持を集めていったのかなどを振り返りました。
ドイツの深刻な経済不況からくる右傾化した自民族中心主義の流れ、そして国内にいる外国人を排斥していったプロセスを見ていくうちに、あれ、これって今もまさに似たようなことが起こっているじゃないかということになりました。そして、Oさんも、Mさんも、Sさんも、Kさんも、担当教員Mも「歴史は繰り返す」という事実を実感するとともに、でも二度と同じことをしてはいけないと、第二次世界大戦後に皆で確認したのに、なぜ、同じようなことが繰り返されるのかという問いに突き当り、生徒の皆さんは、人間が持つ「悪」のようなものが原因ではないかという話を始めました。しかしそこでSさんが、でも「正義」という考え方があるのではないですか、と発言し、「正義とは何か」という話になり、他のメンバーから「正しさとは人によって違うのではないか」という発言が出されました(すごく哲学的な内容になってきたのです!!!)。そこで私(担当教員です)が「「正しさ」とは、時代やコミュニティによって変わってもいいものなのでしょうか?」と問うと、生徒の皆さんは「それは普遍的なものなので、変わってはいけないはずです」と答え、そいえばソクラテスもそのようなことを言っていたと、嬉しいことに「倫理」の授業で最初に学習した内容を思い出してくれました ( 嬉しくて(T_T) )
また、人間が持つ「悪」はあるけれども、人間の中には「崇高」なものもあり、極限状態にあっても人として尊厳をもって行動した人がいる(参照:『夜と霧』フランクル著の中に登場する強制収容所のユダヤ人についての記述)という話を私(担当教員です)がさせて頂きました。
このように2時間に渡る対話の授業は話が尽きず、「また来週お会いしましょう」と名残惜しい雰囲気の中で今日は終了しました。
来週は、人間社会の「正義」について言及してくれたSさんが「貧困」をテーマに、私たち(生徒4人と私)をリードしてくれる予定です。
すごく楽しみです!!!(😀)