ノートルダム女学院中学高等学校 入学式 学校長式辞

 新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。保護者の皆様、本日はお嬢様のご入学、誠におめでとうございます。ご来賓の皆様、ご多用の中、本校の入学式にご臨席賜り、誠にありがとうございます。
 さて、改めまして、新入生の皆さん、私は、皆さんお一人おひとりを、ノートルダム・ファミリーのメンバーとしてお迎えできることを、心から嬉しく思っております。皆さんは、様々な道を通って、今、ここに集って来られました。私たちは、今日たまたま出会って、すぐまた散り散りばらばらになってしまうのではありません。これから私たちは、このノートルダムという家で、一緒にいろいろなことを学び、発見し、成長して行くことに招かれているのです。私は信じています。皆さんをここに招いたお方がいらっしゃるということを。「あなたの場所はここなのですよ、ここで一輪の美しい花となって咲いてください」と優しく導かれたお方がいらっしゃるということ、私は信じています。そのことを今日、あなたに伝えたいと思います。あなたが中学校の3年間、高校での3年間を、ここで喜びながら成長し、自分に何ができるのかを探し、自分の力を、自分の時間を、自分の命を、だれかのために喜んで使うことのできる人に成長していかれることを、だれよりも望み、それを待っておられるお方を、私は神と呼びます。
 
 ノートルダム女学院は、皆さんが生まれるずっと前、60年も前に、神が私たちを愛して下さっている、そのことに気づいてほしい、という熱心な思いひとすじで、アメリカからはるばる来られたシスター方によって建てられた学校です。それから60年、ただ神への熱い思い以外に何も望まず、人々、特に若い皆さんの教育に奉仕したいという、最初のシスター方のミッションへの熱意が受け継がれ、ノートルダム女学院をここまで成長させました。人々は、これをミッション・スクールと呼びます。ミッション・スクールである本校で、皆さんは、一人一人の人生の土台となる考え方や生き方を学びます。ノートルダムが、学校生活を通して皆さんにどうしても伝えたい、大切なことを、私は今日、皆さんにお話しましょう。私の今からの話は、二つの問いかけに応えることになります。一つめは、ノートルダム女学院は、どんな学校か、という問いかけです。そして、二つめは、ノートルダム女学院で、私たちは、何のために、何を学ぼうとしているのか、という問いかけです。
 
 ノートルダム女学院は、どんな学校か、この答えは、「みんな一人ひとりが、日々、愛することを学んでいる学校である」ということです。神に愛されて生まれた皆さんは、一生を愛されるだけで終わることは決してありません。いつかは、生きることの最終目標である、愛することのできる人になるように招かれています。けれども愛することは、決して簡単なことではありません。愛するとは、好きな人、気の合う人と仲良くするということだけではない。好きな人、気の合う人の数をどんどん増やしていくことだけでもありません。愛するとは、時にはそのために、自分の特別に大切なものを使ってしまわなくてはならないこと、意志の力が必要なこと、苦しいこともあるでしょう。でも、私たちが本当に愛することのできる人になりたいなら、神はきっと助けて下さいます。そして、あなた自身を、だれのために、どのように使っていくのか、必ず教えてくださいます。
それは、二番目の問いかけに応えることにもなります。この学校で、何を、何のために学ぼうとしているのか。それは、この学校がお手本にする、イエス・キリストの生き方です。そして、イエスのお母様であるマリア様の生き方に、深く関わります。すなわち、困っている人、弱い立場に立たされている人、助けが必要な人に、自分の大切にしている何かをそっとさし出し、その人のために生きる。ノートルダムで学ぶ皆さんは、神に導かれながら、一人ひとり、そのような人になることを学んでいくのです。皆さんの先輩である上級生も今、あらゆる機会を通してそのことを学んでいます。それは一生かかる長い道のりです。だから、実は、私自身も、先生方も学んでいます。職員の方々も学んでいます。「愛する」ことは、大人になったからといって、自動的にできるようになるものでは決してありません。ゴールに向かって失敗しながら成長を続ける中で到達できる、最高の目標だからです。ですから、この遠い目標からみれば、先生方職員の方々も、あなた方よりも少し前を歩んでいるに過ぎないのです。でも一歩の違いは確かに大きい、だから、皆さんは、教職員の方々から、上級生の先輩から、たくさんたくさん、学んでください。世界をもっと知ってください。困っている人々が、どこにいるのか探し出すためです。望まずして弱い立場に押しやられている人々が、どこで泣いているか、何に苦しみ、何を嘆いているかを知るためです。そしてこの宇宙は、どのようにしてでき、今どう成り立っているのか、この自然環境は、どうすれば保っていけるのか、人間同士ばかりでなく、人と自然は、どのようにしたら本当の意味で支え合い、健全につながっていられるのか、それらをしっかりと知るためです。皆さんがこれから、中学で、高校で勉強するのはこのためなのです。自分にできることをしっかりと見つけてください。それが「学習」の意味です。皆さんの、そして私たち全人類に課題として与えられている「学び」の真のゴールです。そして、このプロセスは、私たちを愛してくださった神に応えて、愛する人になっていくために必要な、ご自身への糧となるでしょう。ノートルダムの教育は、すべて、この「愛すること」に、向かっているといっても過言ではありません。
 新入生の皆さん、今日から、私たちはノートルダムという家族のメンバーとして、一つ屋根の下で、自分と他者を大切に慈しみながら、ご一緒に道を歩んでまいりましょう。神はいつも必ず、私たちと一緒に歩んでくださいます。神が共にいて下さることに信頼して、一日一日を丁寧に生きてまいりましょう。今日からの学校生活を通して、皆さんの上に、神様の祝福が豊かにありますようお祈りします。

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