エッセイ 2月28日、第58回卒業式を挙行いたしました。

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創立60周年を機に、2012年度より、本校のルーツである米国の姉妹校に合わせて、キャップ&ガウンを身にまとって、139名の生徒たちは、それぞれの夢を胸に、この学び舎を巣立っていきました。

当日の学校長式辞を、以下に掲載いたします。

 

 

 

 

 

皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日の皆さんは、マリアン・ブルーのガウンに身を包み、眩しく輝いて見えます。保護者の皆様、高いところからではありますが、お嬢様のご卒業、誠におめでとうございます。本日のお喜びの日を、ここでこのように共にできることを、心より幸せに思っております。パウロ大塚司教様、シスターモーリン和田理事長様を始めとするご来賓の皆様、本日をこのように共にしていただくことは、私たちの大きな喜びでございます。誠にありがとうございます。

卒業生の皆さん、このように私がこの壇上から皆さんに向かってお話しすることも、もう、これが最後になります。ノートルダム女学院での大切な時間は、この139名の方々に同じように与えられ、それは同じように過ぎ去っていくように見えますが、実はその中身は、一人一人に特別に用意され、時機を得て計らわれ、与えられたものです。すなわち、この時間のすべては、神様からのあなた方一人ひとりへのかけがえのないギフトでした。まわりの人々や出来事、事物に、尊敬をもって対話的に関わり、その関わりの中で培われた共感力と行動力をもって、あなた方はまもなく、それぞれに用意された次の扉を開き、次のステップへ進んでいかれます。そこには未知の世界が広がっており、皆さんは、それぞれの人生を、より独自に、創造的に生きることに招かれています。その扉のノブに、今手をかけようとするあなた方お一人おひとりの背中に向かって、私はその後ろに立ち、大切なことを最後に知らせます。それは、あなた方が卒業しようとしているノートルダム女学院が全身全霊であなた方に知らせたかったことです。

ノートルダム女学院は、あなたに、この世界であなたは決して孤独ではない、ということを、あらゆる機会を通して知らせてきました。あなたをこよなく愛し、喜びとご苦労の中で大切にお育てになったご両親の心、何気ない日常の中で、楽しかったことや辛かったことを共にしたかけがえのない友人たちの心、そして、どんな時もあなたを励まし勇気づけることを忘れなかった教職員の方々の心、あなたは、これらの沢山の心にふれあい、一番大切なことに気づいたはずです。それは、ここノートルダムであなたは、すべてを包み、そしてすべてを超える神の愛の中におられたということです。そして、それを知ったあなたは、これからも、神の守りがあなたを離れないことをも知っているはずです。あなたが神の愛の中で生まれ、あなたの青春の日々が神の愛の中にあったように、これからも、あなたは、愛されて生きる人としてどうか、あなたが出会うすべての人々にとって、光であり、希望であってください。この世界には、孤独な人、苦しんでいる人、弱い立場に押しやられて泣いている人々がたくさんいます。あなたのすぐ近くにも、そして遠く海の向こうにも。まなざしをしっかり神に向けて進む時、神はそれらの人々の存在をあなたに知らせてくださることでしょう。どうか、それらの人々の隣人となり、彼らを愛し抜き、彼らにとって光となり、希望となってください。ノートルダムで教育を受けたあなたには、それがおできになると私は信頼を持っています。

ノートルダムで学び始めたばかりのあなたは、まだ幼く、自分にいったい何ができるのかを知りませんでした。でも、在学中に、沢山の課題に向き合い、それを解決しようと悩み、考え、困難に打ち勝ってこられました。それらをくぐり抜けられたあなたは、今、一人ひとり、美しく輝く18歳の姿を、私たちに見せてくださっています。自信をもって、扉を開けてください。扉の向こうの世界で、あなたはノートルダムで開花し始めた可能性をもって、神に派遣された場所で、ついに一輪の美しい花になります。その花は、一輪一輪、神から与えられた使命を持っています。どこでどのように咲くか、それは神のみがご存知でしょう。一人ひとりに与えられた使命はその人固有のもの。その使命を果たすために、大いに愛し、愛し抜き、時には戦い、時には休らい、それらの日々に神は常に絶えず、あなたと共にいてくださる、そのことを信じ、全力であなたの生命を燃やしてください。それが、私の、あなたがたお一人おひとりへの、切なる願いです。

昨年10月びわこホールにおいて、皆で盛大にお祝いしたノートルダム女学院の新しい門出は、ちょうど60年前、日本の地に勇敢に降り立った、ミッションへの最初の熱意がなければ叶わないことでした。私は、あの日、ノートルダムの初代校長シスターメリーユージニアレイカーに、私の祈りの取り次ぎを願いました。戦争に負け、物資貧しい日本、京都の東の山すその、何もない鹿ヶ谷、そこで一からすべてを始められたシスターユージニア校長は、何を思い、何を祈り、何も夢見て、この学校を建てられたのか、そのことに思いを馳せました。60年が経ち、1万人以上の卒業生を輩出するカトリック女子校に成長したその先端において、今と未来の責任を担う今日のノートルダム女学院は、もはや、過去の経験や知識に頼るだけでは生きてゆけない新しい時代に存在しています。願うことは、めまぐるしく移り変わる社会の只中で、時代を読み取るしなやかなヴィジョン、グローバル化が加速度を増す中、そのひずみに目を向け行動するための感性、しかしながら、私にとって最も大切な願いは、女学院に学ぶ一人の人格が、いつの時代においても、神の愛を信じ、その愛で自己と他者を、誠をもって大切にできる女性になることであり、ノートルダムがその学び舎であり続けることです。

今日、私はこの学年の卒業生に特別なプレゼントをさせて頂こうと思います。それはあなた方が、記念すべき、創立60年目、ダイヤモンド・ジュビリーの年に、この学び舎を巣立つ生徒たちだからです。1952年4月15日、本校最初の入学式での学校長シスターユージニア・レイカーの英語の式辞の一部です。敗戦後3年しか経たない占領下の日本で学校の設立を着手され、3年後の1952年に開学。それはポツダム宣言を受諾した日本が、自らの国家を取り戻そうとしている時と重なっています。初代校長は、米国人として、戦争でズタズタに傷ついた日本人に対して、和解と友愛の心情で対話され、誇りをもって生きるように呼びかけられました。あなた方に今日、この入学式でのスピーチをプレゼントします。

 

True education does not consist merely in acquiring knowledge. Fundamentally considered, education consists in the formation of character, in the development of all that is good and noble in the human being, to the end that he or she may attain her own happiness as well as the happiness of her fellow-beings.  Hence the school’s motto is VIRTUS ET SCIENTIA.  We hope you will always be true to this motto combining with knowledge a virtuous character that will make you an honor to God, to your parents, to your school, and to your country.

(和訳)
真の教育は単に、知識の獲得のみにあるのではありません。教育はその人のうちにある善なるもの尊いものを成長させながら、その人格を磨いていくことに他なりません。そしてついには、自己のみならず、他者を幸福にすることができる人間になることです。
故に、VIRTUS ET SCIENTIA 「徳と知」は、この学校のモットーなのであります。あなた方は常に、このモットーに忠実に、知識に加えて徳の高い人格をめざし、神が、そしてあなた方のご両親が、この学校が、そしてあなた方のこの国が、誇りとする人になってください。


きっとシスターユージニアも、神の国から今日、ここにいる私たちに祝福を送って下さっていることでしょう。

私が大学生の時、私に個人的に聖書を一緒に読んで下さっていたシスターユージニアは、ある時、私に、ご自身が純白の毛糸で編まれたマフラーをくださいました。私はもったいなくて、なかなか使うことができなかったことを憶えています。でも、校長になった最初の冬、今年、大切にとっておいたそれを、私の肩にかけてみました。30年以上経っても、シスターのマフラーは、眩しく白く温かく、私を包んでくれました。身にまとうものには意味があります。あなた方がマリアン・ブルーを今、身にまとっていることにも意味があります。あなた方がノートルダムで得たすべての愛に満ちたものを、このマリアの色であるガウンに託し、それを身にまとって卒業してください。振り返らずに、前に進み、恐れることなく今、未知の扉を開けてください。

神の祝福が皆さんの上にいつも豊かにありますように、お祈りいたします。

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