エッセイ みんなのほんたうのさいはひをさがしに行く~「銀河鉄道の夜」

今日、図書室での朝HRに顔を出していると、ある一人の中学生が「銀河鉄道の夜」を手にもちながら、「先生、私が一番好きな本なんです」と話しかけてくれました。思わず即座に「私もなのよ。大好きな本が同じなのね」とこたえました。その生徒は小学校の頃にこの本に巡り会い、幾度となく読んでいるのだとのことでした。本当に嬉しく思いました。きっと、あの本の中に込められているスペシャルなメッセージをしっかりとつかんでくれているに違いないと思うからです。

それにしても不思議な物語です、宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」。時空間が縦横無尽に移動し、夢と現実が交差する中で、「本当の幸い(さいはひ)」とは何かを探し求めるジョバンニ。彼の周辺で登場する、あるいは使われる多くのモチーフ―家族、旅、鉄道、切符、親友カムパネルラ、自分のいのち、他者の幸福―は、私たちに、「本当の幸い」を探す旅は実は2人ではなく「ひとり」、自分の命を失って変容する祈り、生と死の二つの次元の転換と超越、そして伴う崇高さを存分に感じさせてくれます。どこか懐かしい、いたるところで逆説的、そしてとてつもなく根源的です。

読後、自分を、何か非常に大きくて優しくて美しいものに、すべて残らず明け渡してしまいたい!と言って大声で泣きたくなるのは私だけでしょうか。

「銀河鉄道の夜」について、数回かけて分かち合いたいことがあります。それぐらいすばらしいのです。図書室でのHRであの生徒に出会えて本当によかった。
続きはまた次回に。

前のページに戻る