エッセイ 神様と私のラブレター
5月2日付けのガラスの天使とカードのコラボ写真は、気に入ってくださったでしょうか。校長室の窓から優しく薫る風を、あの写真から感じて下さったら嬉しいです。あの日も、そして今日も、真っ赤なハートを運ぶ天使のウインド・チャイムは、窓際で繊細で美しい音を奏でてくれています。
ゴールデンウィークの間に、お約束どおり、あの詩を訳してみました。
E. E Cummings は、この詩をどのような心情で、何を思い浮かべながら創作されたのでしょうか。それを思い巡らしています。
この詩は最近、”In Her Shoes” という米国映画にも登場しました。妹が姉の結婚式にこの詩を朗読します。間違いなく、とても親密な人と人の心の交流、大きな愛に満たされた魂の歓びが伝わってきます。
皆さんそれぞれに、このような強烈な愛のことばを捧げることのできるだれかがおられるとすれば、それはなんと素敵で素晴らしいことでしょう。しかしながら、この詩を捧げる相手など、私には到底いないと思ったとしても、実は、そう思うあなたご自身に向かって、この詩のこの言葉を毎日投げかけておられる方がいらっしゃいます。今日、そのことを皆さんにお知らせしたいと強く思いました。
その方のことを、私は「神」と呼びます。月や太陽、星を配置し、全宇宙を司り、そしてその中に生きる小さな一人ひとり、私個人という存在を慈しんで愛される。存在を根底から支え、抱き、何が起こってもそばから離れずにいてくださる。そして、いつも、この詩のことば、あるいはそれ以上のすべてを惜しげもなく与えて、与えて、私が知らなくても、気づかなくても、与え続けておられます。いつ頃からか、私はそのことに気づき始めました。神様からこのように愛されることを一度知れば、私も神様に対して、それに応えたいと心底から思う。魂が望み、理性が計算できないほどに、愛したい。私がそう愛したいと望むのは、神様が先に、このような愛を溢れるほど下さったからです。この詩は、神様からのラブレターという言い方もできるし、私からの神様へのラブレターという言い方もできます。
そう思うとCummingsは凄い詩人です。神の愛のほとばしりを人間の言葉で表現したのですから。この詩の「私」はむしろ神様を仰ぎ見る私そのものです。
私はあなたの心を大切に抱(いだ)く
私の心の中に 大切に抱(いだ)く
決して離れない
私がどこに行こうとも あなたも一緒
私が何をしたとしても想いは一つ 愛しい存在(ひと)よ
運命を恐れることはない
愛する存在(ひと)よ あなたが私の運命だから
世界などほしいとは思わない
美しいあなたは世界そのもの 真実そのもの
あなたこそは 太古より月が意味してきたすべてのもの
そして太陽が常に謳(うた)おうとするすべて
これこそは誰一人知る人のない奥深い神秘
根っこの中の根っこ
芽吹きの中の芽吹き
天空の極み
伸びやかに育つ命という名の木
それは魂の望み得る限りを超えて高く
理性の隠れ得る深みよりさらに深い
これこそはちりばめられた星の神秘
私はあなたの心を大切に抱(いだ)く
私の心の中に 大切に抱(いだ)く