ノートルダム女学院高等学校 2022年度 卒業式 式辞
ノートルダム女学院高等学校 2022年度卒業式 式辞
2023年2月28日
学校長 栗本嘉子
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様、高いところからではございますが、お嬢様のご卒業、誠におめでとうございます。3年間、または6年間、ノートルダム教育に共感し、信頼してご同伴頂いたことを、心より感謝申し上げます。本日は、カトリック京都教区長、大塚喜直司教様を始めとするご来賓の皆様も3年ぶりにお迎えいたしました。ご多用の中、ご来校賜り、誠にありがとうございます。そして、2階バルコニー席には、同窓生の皆様のご列席を頂いております。こちらも3年ぶりの再開となり、今年度は第26回卒業生の皆様をお迎えしております。本日はようこそ母校へお越しくださいました。後輩たちの門出をどうぞ見守って頂きますようにお願いいたします。
さて、皆さんは、中学3年生の終盤にさしかかる頃より今日に至るまで、新型コロナウイルス感染症と向き合うことを余儀なくされる日々でした。不安の中で皆さんが高校生活を始めた当初は、ちょうど感染が本格的に拡大し始めた時で、それ以来一日も欠かすことなくマスクを着用する毎日でした。4月の桜の頃、新しい教科書や教材をそそくさと持ち帰るとすぐ、学校はそこから2カ月、異例の閉校措置となり、新しいお友達のお名前もお顔もまだ知らないのに、自宅でのオンライン授業期間に入りました。その年、少しでも落ち着いた雰囲気でと願い、皆さんの入学式は、これも異例の7月4日土曜日に改めて行われましたね。その時はだれも、このウイルスとの闘いが、3年も続くことになるとは予想しておらず、日本の国内だけをとっても累計感染者数が3300万人、世界全体では実に7億人の人々が感染し、これまでに680万人に上る方々がお亡くなりになった、まさに地球に襲いかかった、未曽有のパンデミックとなるとは、ほとんど予測できませんでした。
この間、世界全体では、二つのオリンピックを始め、サッカー・ワールドカップなど国境を越えて共通の目標に向かうスポーツ祭典は、延期をしても中止することはしませんでした。この時こそ、地球全体がつながり、ひたむきに頑張る人々を皆で応援し、自分も頑張ろう、そんな気持ちにしてもらえたのは、暗闇の中に見出した恵みの時でした。また、死者と残された家族のための祈りの言葉、医療従事者の方々を励ます音楽、外に出られない私たちを勇気づけるメッセージや楽曲の発信が、世界中あちこちで繰り広げられました。イタリアのグループの音楽とメッセージ、アメリカの子どもたちの絵や言葉、日本のバイオリニストによる美しい演奏など、力強く温かいメッセージを、私もオンラインで見たり聴いたりして、世界の心が一つの方向にあることを力強く感じたひと時でした。本校のオーケストラクラブも、「負けないで」という曲を、部員それぞれの自宅から合奏し、一つの美しいメロディーとなって私たちを元気づけてくれたことは今でも感謝しています。この危機の時、それでも世界中の人々の善意の結集が、暗闇を照らすように感じました。皆さんの高校時代の3年間は、世界がこのような時であったこと、このことを皆さんと同様に私も決して忘れることはないでしょう。
本校でも、あらゆる創意工夫の精神で、このパンデミック以前には考えも及ばない方法で、学習の成果発表や、文化祭やスポーツデイなどの行事をやり抜こうとしてくれました。生徒も教職員も皆が共に同じ地平に立ち、無限の可能性に向かって果敢に歩むことができた、そのことを、そして皆さんご自身のことを、私は学校長として、心から誇りに思います。
さて、マスク着用の要請もようやく緩和され、もしかしたら、この感染症との向き合い方も、これまでとは少し異なっていくかも知れないという希望の春を迎えるにあたって、皆さんに申し述べたいことがあります。私たちが遭遇した苦難、あるいは危機、それは、人類が善なる方向へ向かおうとする過程において、大切な気づきを与えてくれたということです。危機はまず、我々の心の中にあるものを剥き出しにしました。世界には、苦しむ人を助けるために自分の身を捧げようとした人々もいれば、弱みにつけ込んで利を得ようとする人もいました。創意工夫で何とか他者とつながろうと努めた人もいれば、分断をますます深めた人もいました。個人だけでなく、国家レベルにおいても、パンデミックの中で命を守ることと経済を優先することの優先順位は、たゆまなく試されました。思考停止、利己主義、無関心、分断、不公平な分配、格差、という世界の現実のはざまで、我々は常に試されてきました。教皇フランシスコは、ご著書、「コロナの世界を生きる」でも、「もう一つのウイルス」という言葉で、これらの危機について説かれています。
どうか今、このような世の中に、このノートルダム女学院で学ばれたあなたは、どんなに小さくともしっかりと輝く灯なのだということを信じてほしいのです。必要な人々のために、その光を待っている人たちのために、灯される小さな光を、皆さんが、皆さんの胸の内に既にもっておられる、そのことを今日、私は申し上げたいのです。まさしく、「あなたがたは世の光である」というマタイによる福音書5章の聖書のことばの通りなのです。イエスは、言われました。「あなたがたは世の光である。…あなた方の光を人々の前に輝かせなさい(マタイ5:14, 16)。」あなたがたの行いを見て、それを見た人が神様を知るようになるためだと、そう、おっしゃっている。自分が輝くのは、神様の為なのです。ノートルダム教育を受け、今、マリアン・ブルーのガウンに身を包んでおられるあなた方は、すでに「光」である。その光を、どうぞ、ご自分の内側から人々の前に、輝かせてください。分断された世界を、あなたの光でつなげてください。心細く泣いている人がいれば、あなたの光で照らし力づけてください。自分と異なるように見える人がいても、あなたの光で、違いよりも協働できる何かを探してください。
最後に、本校の宝であるミッション・コミットメント、これをご卒業に際して、今一度思い起こされるようにお勧めいたします。マリア様に倣って、すべてを尊び、心を込めて聴き、心を開いて共感すること。そして、人々の幸せとこの地球の平和の為に歩み始めること。そのことを改めて、一日ごとに、丁寧に行ってみてください。ノートルダム教育の完成形、それは、あなたの人生を貫く、一本の慈しみの道を見つけ、人々の、特に、弱い人、苦しむ人の傍らに立ち、この世界の共通の善なる道を探りながら行動できることだと私は思います。それを本日決意し、あなたのこれからの人生を力強く、しなやかに、歩んでください。
皆様のご卒業に際して、神様の祝福が豊かにありますよう、心からお祈りをいたします。