ノートルダム女学院中学高等学校 創立70周年記念式典 式辞

ノートルダム女学院中学高等学校 創立70周年記念式典 式辞

 

2022年10月12日

 

学校長 栗本嘉子

 

 

 

 

 

ノートルダム女学院中学高等学校は、神様の慈しみと、多くの皆様のご支援と励ましのお陰様をもちまして、本日、創立70周年を迎えることができました。心より、父なる神様に賛美と感謝をお捧げいたします。そして今ここに、ご臨席の多くのご来賓の皆様、本日はご多用の中お越し頂き、誠にありがとうございます。また、この後の感謝のミサを司式頂くカルメル会の中川博道神父様、心より感謝申し上げます。シスターモーリン和田理事長様をはじめとするノートルダム教育修道女会のシスター方、本日はご同伴を誠にありがとうございます。さらに、70年の時間の流れの最先端でノートルダムの中で成長を遂げようとしてくれている生徒の皆さん、保護者の皆様、そして、同志であり、日々苦楽を共にしている教職員の皆様、この特別な日を共にすることができて、私は校長として心から皆様に感謝いたします。

 

本日、感謝のミサに引き続き、卒業生と現役生徒が登壇し、記念シンポジウムが開催されます。ノートルダムの宝は、その教育をしっかりと受けている生徒たちです。そして、その生徒たちがここを巣立って、ノートルダムの価値観を胸に、社会で貢献している、その卒業生の姿そのものです。私たちの教育は、生徒、卒業生のそれぞれの人格の中に表現されています。社会のそれぞれの場所で、自分の使命を見出し、自らの内側の光でまわりを輝かせ、神様の被造物の善のために働く姿は、「あなた方は地の塩、世の光である」 と言われたイエス様の教えそのものなのです。

 

さて、今から70年前の1952年にノートルダム女学院はこの京都の地で産声を上げました。戦後間もない物資貧しい日本の地に、ミッションに燃えてアメリカから来日されたノートルダム教育修道女会の4人のシスター方。神の愛を知らせることにすべてを賭けた彼女たちの熱意は、やがて多くの日本人会員を得て、教育修道女会として、「徳と知」 を建学の理念としたカトリックミッションスクールを開学するに至りました。この学園草創期のエピソードに、私も生徒の一人として何度も興味深く耳を傾けました。習いたての日本語を一生懸命使いながら、アメリカ人修道女たちが若い日本人修道女の一人ひとりに対して、日々、対話と協働を重んじられたこと、そして、戦後の動乱がまだまだ続く中で、少し前まで敵国だったアメリカ人の、ましてや「シスター」 といわれる方々が行っておられる「ノートルダム教育」 に、ご自分たちの大切な子女を委ねる保護者たちの信頼と勇気が、シスター方をむしろどんなに励ましたのか、そのようなことを私の在学中、シスター方からたびたび分かち合っていただいたことを記憶しています。

 

若い頃の私の心の奥底にはっきりと宿ったもの、それは「ノートルダム女学院は、普通の学校ではない。人がその一生を捧げるに値すると思える神様への想いに駆られて建った学校なのだ」という確信でした。一人の人間が、その一生を喜んで明け渡してしまえるほどの「神様」とは、一体何者なのか。「神の子イエス」と言われるその方は、果たして私にも関係があるのか。女学院での若かりし時代をシスター方に導かれながら、やがて、そのような大きくて静かな問いかけを、私の青春の日々に神様が心の内に宿して下さいました。それから40年以上の歳月が流れ、本日は、これまでの歩みへの感謝と、21世紀のただ中を生きるノートルダム教育の実践に際して、神様のご同伴を願い、新たな決意を表明する時です。

 

私たちが信じる愛の神は、この地球を、そこに住まうすべての生き物を、そして、ご自分にかたどられた私たちを、愛に満ち溢れてお造りになりました。そして造り終えられた時、「極めて良かった」とご覧になった。しかしながら、現在のこれら被造物の姿はどうでしょう。私たちのエゴのために、痛めつけられ叫び声を上げている地球とその上の生き物たち、また、利権に目がくらみ、争いを止めることができない人間たち。地球の現在の姿、そして私たち自らの姿は、私たちに、解決が急がれる課題を突きつけています。全力で、平和への道を見つけ出そうという課題です。それにはある決意を伴います。どのような時でも、私たちの利益を優先しない、どのような時でも、困っている人、助けを求めている人を置き去りにしない、そして、どのような時でも、互いに愛し合うという決意です。その決意を、今日、心新たに神様にお捧げいたしましょう。神様は、私たちのその決意を喜ばれ、また必要に応じて必ず、助けてくださいます。

 

学園草創期のシスター方とは比べられないにしても、今を生きる私たちもまた、懸命に解決すべき課題に日々取り組んで参りました。その一つが、2020年初頭から私たちを脅かし続けている新型コロナウイルス感染症との闘いです。その影響は、学校という舞台で、たった一度限りの青春を謳歌するはずの若者たち皆さんにとって、大変悔しい、やるせない、計り知れない損失だと映ったかも知れません。が、同時に、何が降りかかろうとも、皆で重荷を分かち合い、深く考え、工夫を重ねることで、乗り越えられることは多かった。そして間違いなく、私たちを以前より強くしてくれました。この新しい難題に取り組んだ日々は、生徒の皆さんにとって大切な経験、大きな恵みです。これからどんな困難や難題が押し寄せても、誇りをもってこれらの経験を振り返り、降りかかる困難を乗り越える糧としてください。私自身も、この目に見えないウイルスの為に、生徒の皆さんや仲間と共に一生懸命に祈り、考え、最善を探り、実行していった大切な日々こそが、とりもなおさずノートルダム教育の実践だった、そのことを決して忘れることなく、大切なスピリットとして後世に渡して参りたいと思います。

 

本校に常に同伴してくださった同窓生の皆様方も、その総数は現在、11,614人に上っています。ご一緒に歩みを共にしながら私たちを励まし育てて下さったシスター方、恩人の方々の多くも、既に天国に召され、神様のおそばで私たちの為に祈ってくださっています。今日のこの特別な時に、きっと私たちを心に留めていてくださっていると信じています。

 

次の10年先、20年先も、輝き続けるノートルダムとして存在するために、どうか、ここにおられるすべての皆様のご指導とご支援を何卒宜しくお願い申し上げます。 

 

神様の祝福が皆様の上に豊かにありますようお祈り申し上げ、私の式辞とさせて頂きます。

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