ノートルダム女学院高等学校 2021年度 卒業式 式辞

ノートルダム女学院高等学校 2021年度卒業式 式辞

 

2022年2月28日

 

学校長 栗本嘉子

 

 

 

 

 

 

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様、高いところからではございますが、お嬢様のご卒業、誠におめでとうございます。3年間、または6年間、ノートルダム教育に共感し、信頼してご同伴頂いたことを、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

 


さて、今年度ご卒業される皆さんは、高校一年生の終盤にさしかかる辺りから今日に至るまで、新型コロナウイルス感染症との対峙の日々であったと思います。感染が拡大し始めた当初には、まさか、日本の国内で、累計感染者数が400万人を超えることになり、その闘いが2年を超えることになるとは、だれも予想しなかったでしょう。世界全体では実にこれまでに4億人を超える人々が感染し、その中での死者は、600万人に到達する、まさに地球全体に襲いかかった、未曽有のパンデミック、世界規模の大感染となりました。

 

 

 

 この2年の間、私たちは、まさに命を最優先に守るための選択をしつつ、生活様式も大きく変容し、私たちの学校という場面を一つ取り上げても、すべての命の為に、多くの我慢を皆さんにお願いしなければなりませんでした。そして、皆さんは、それをできるだけポジティブに捉え、不平不満を言うことなく、この制限の中で、できることをやっていこうと実に果敢に考え、実行してくれました。オンラインという学習方法も定着し、従来の方法に囚われない新しい発想、やってみたかった新たなる展開がこの際に実現しました。それは授業のみならず、生徒独自の企画によるバーチャル文化祭の開催や、生徒会の活動手段や学習成果のオンライン配信など、私たちにとっては新たなチャンネルがコミュニケーション手段に加わりました。そのプロセスは、しかしながら、決して順風ではなく、楽しみにしていたイベントがことごとく中止になり、制限だらけでやる気をくじかれるようなこと、コロナさえなければ、と悔しく思ったことは一度や二度ではなかったはずです。それでもなお、ノートルダム女学院はこの間、生徒も教職員も皆が共に同じ地平に立ち、無限の可能性に向かって果敢に歩むことができた、そのことを、そして皆さんご自身のことを、私は学校長として大変誇りに思っています。

 

 

 

 

 

 

さて、このパンデミックの2年の間、世界のあらゆる場所で、共通の目標、コロナウイルス撲滅を目指して力を結集し、ワクチンを作り出すことに成功し、ウイズコロナ、アフターコロナにおける生き方のパラダイム・シフトが多くの局面で語られるようになりました。医療に携わる方々を含む、多くのエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々によって、わたしたちの普通の暮らしが、どれほど滞りなく支えられてきたものであったのか、ということを再認識できました。特に世界中の医療現場の病床が逼迫していたその現場では、医療従事者の方々は、患者の命を救うために、ご自身の命を犠牲にした人もたくさんいらっしゃったことを私たちは知っています。そして、普通の暮らしの中にあって、我々の心に潤いと高まりを与えてくれたあらゆる分野の文化、芸術、スポーツやエンターテインメントの大切さ、そして同時にその脆さも、この際に改めて認識しました。コロナ渦であった二つの国での大きなスポーツ祭典を始め、国境を越えて共通の目標に向かう時、地球全体がつながっている、優しい気持ちが溢れている、ひたむきに頑張る人々を皆で応援し、自分も頑張る、そんな気持ちにしてもらえたのは恵みの時でした。まさにコロナ渦だからこそきらめく、人々の心と心の温かいつながり、それがたくさんあった2年間でもありました。

 

 

 

 

 

 


 一方で、このパンデミックという嵐は、この世界の現状の中に潜む、あらゆる負の側面、利己心、不寛容、不正義、分断、不公平な分配、経済やテクノロジーの格差といった現実をより明白に露呈させました。教皇フランシスコは、新型コロナウイルスのパンデミックは、「無関心」というウイルスによるもう一つのパンデミックの存在を浮き彫りにした、と言われました。今日、このおめでたい日に、皆さんが漕ぎだしていこうとする世界は、こんなにひどいのだと言いたいわけではなく、また警告を与えたいわけでもありません。むしろ、このような世の中に、このノートルダム女学院で学ばれたあなたは、どんなに小さくとも輝く灯なのだということを信じてほしいのです。必要な人々のために、その光を待っている人たちのために、灯される小さな光を、皆さんが、皆さんの胸の内に既にもっておられる、そのことを今日、私は申し上げたいのです。まさしく、「あなたがたは世の光である」というマタイによる福音書5章の聖書のことばの通りなのです。イエスは、すでにあなたがたは「光である」とおっしゃっている。光になれ、ではなく。そして、「あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい」と仰っています。何のために?それは、あなたがたの行いを見て、それを見た人が神様を知るようになるためだと、そう、おっしゃっている。自分が輝くのは、神様の為なのです。ノートルダム教育を受け、今、マリアン・ブルーのガウンに身を包んでおられるあなた方は、すでに「光」である。その光を、どうぞ、ご自分の内側から人々の前に、輝かせてください。分断された世界を、あなたの光でつなげてください。心細く泣いている人がいれば、あなたの光で照らし力づけてください。自分と異なるように見える人がいても、あなたの光で、違いよりも協働できる何かを探してください。
ご自身が輝く方法は、すでにあなたがたはご存じです。本校の宝であるミッション・コミットメント、これをご卒業に際して、今一度思い起こされるようにお勧めしたいと思います。マリア様に倣って、すべてを尊び、心を込めて聴き、心を開いて共感すること。そして、人々の幸せとこの地球の平和の為に歩み始めること。そのことを一日ごとに、丁寧に行ってみてください。ノートルダム教育の完成形、それは、あなたの人生を貫く、一本の愛の道を見つけ、人々の、特に、弱い人、苦しむ人の傍らに立つことです。それを決意して、あなたのこれからの人生を力強く、しなやかに、歩んでください。

 


皆様のご卒業に際して、神様の祝福が豊かにありますよう、心からお祈りをいたします。

 

 

 

 

 

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