ノートルダム女学院の<ザ・授業>
<04>ハイブリッド教育

2020年度行われた大学入学共通テストと総合型選抜、各大学の独自入試は、早稲田大学の政治経済学部が一般選抜入試で総合型問題を出題したことに象徴されるように大きく変わりつつあります。共通テストでは、課題が文章1つから複数になる傾向が目立ちました。またグラフや絵というデータのリテラシーも求められるようになりました。 知識が単体で問われる入試から知識同士の複合的な関係について問われるようになったと言い換えてもいいかもしれません。

 

 

そうなってくると、必ずしも知識を暗記していなくても、推理して考えて出来る問題も多くなったと言われています。また、グラフや絵を読み取る中で新しい気づきを得ることもあります。ですから、そこから未知の新しい知識を獲得するということもあるわけです。

共通テストの形式は選択問題ですから限界はありますが、それでもたしかに大学入試改革に伴い改訂された学習指導要領の1つの柱である「主体的・対話的で深い学び」が生かされる問題になったといえるという評価の声も教育界では聞こえてきます。

それは小論文のみならず自己プレゼンテーションなどもある総合型選抜ではもっと濃厚なウネリとして顕れました。私大の一般入試でも、国公立大学で出題されるように、ピクチャライティングやワンパラグラフの論述問題が出題されるようになってきています。

そして、早稲田大学の政治経済学部のように、総合問題が一般入試で出題される時代がやってきました。今までは、京都大学の特色入試や東京大学の推薦入試など一般入試以外で出されてきたような問題で、日本語と英文の両方の課題文が出題されたのです。

早稲田大学では、それは同大学のハイブリッド教育を行っていることの反映だと捉えているようです。この傾向は、今後同大学以外でも広がっていくでしょう。

ノートルダム女学院は、当然そのような「主体的・対話的で深い学び」の効用が問われる時代がやってくることを想定していて、グローバルコースや各コースのいわゆる探究の授業で、PBLを行ってきました。

 

 

そして、2年前に一般の授業でもPBLを実践しようという動きになりました。当初森兼先生(社会科)は、グループワークや対話の方法をどうしたら効果的にできるのか悩みながら果敢にチャレンジしていました。

それが、昨年のパンデミックで、オンライン授業になったのをきっかけに、多様なアプリやプラットフォームを使いこなし、生徒1人ひとりの対話の内容や強み弱みが明快にわかることに気づきました。

一斉休校が終わり、学校再開になってからも、通常授業の中で、プラットフォームやアプリを使う、まさにリアルとサイバーの両方の空間を統合するハイブリッド授業を展開していったのです。

その結果、「生徒のモチベーションと学力向上に手ごたえを感じています」と森兼先生は自身を持って語っています。

このオンライン授業の推進は、ノートルダム教育開発センター長の霜田先生(社会科)が、ゆるやかな「学習する組織」(この学びの方法論は、今年慶応義塾大の環境情報の入試で、活用するように指示があったピーター・センゲのシステム思考に基づく考え方です)である、ナレッジ・カフェを発足して行いました。Zoom対話で先生方がオンライン授業のメソッドを情報交換する機会を設けたのです。

霜田先生自身も、オンライン授業で活用する様々なアプリやプラットフォームの活用方法を研究しています。

 

 

今では生徒が自ら簡易サイトをつくって文化や歴史などについて調べたことを書き込んでいきます。PBLの大事な点は、仮説を立てて、それについて調べては議論しながら検証するという試行錯誤です。そして、最終的にレポートにまとめ発表するところですが、その発表が広く公開される体験は今までなかなかできませんでした。ところが、オンライン授業を通して、サイトをつくって発信する体験が意外と簡単にできることに霜田先生は気づいたのです。

昨年の冬休みに、部活の合間に、カントとヘーゲルを調べてサイトで発信した授業をうけた4人の生徒が、霜田先生の呼びかけにZoom上に集まりました。そして、その知識をつかって、コロナ禍にあける生活や社会問題について語り合いました。

考える背景にカントの道徳律を活用したり、問題解決のためにヘーゲルの正反合という弁証法的論理を活用したりする対話を霜田先生としていました。Zoom空間は、霜田ソクラテスと弟子たちの対話そのものとなったのです。

このように、ノートルダム女学院は、時代の精神に対応すべく、知識と思考のハイブリッドであるPBLの動きが浸透し、さらにリアルとサイバースペースの両方を使うハイブリッドPBL授業へと発展しています。

そして、20214月から中学では、グローバルコースだけではなく、すべての生徒の英語力を豊かにしていくカリキュラムになります。日本語と英語の両方を使う教育という意味でもハイブリッドとなるります。

ノートルダム女学院は、いまここに生徒の未来を見出し、それに対応するは多面的なハイブリッド教育を実践しています。

 

 

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