ノートルダム女学院の<ザ・授業>
<03>ことばの技術

食事の時に生徒が“Refill please.”と言えば、それは「おかわりをください」ということです。元気いっぱいの在校生の英語のコミュニケーション力が伝わってきます。ところが、もし生徒が“Refill the oil tank.”という文に接したらどうでしょう。

「給油タンクに給油しなさい」という意味ですが、生徒は、あれっ?と反応するでしょう。

英語では、食事をする場合にも、容器に補充する場合にも同じ「単語」が使われているからです。

 

 

このような「ことば」に対する鋭い感性までも大事にするのが、ノートルダム女学院の英語の授業と言語技術の授業です。“refill”ということばは、英語と日本語とでは、使われる場や意味が共通する点と違う点があります。

ディーン先生は、「単語」「意味」「語法」「文法」という側面からのアプローチ以外に、文化や社会の違いを考えるアプローチを生徒と学んでいきます。そして、どう違うのか事実(fact)と意見(opinion)をきちんと区別してエッセイ(小論文)を描いたりリーディング(読解)を行ったりしています。

この方法は“Language Arts”と呼ばれている方法で、外国人教師はそれぞれのやり方を持っています。ディーン先生はドイツ語の参考文献も読んで、さらに広く深く熱心に研究し実践しています。

一方で、「ことば」といえばなんといっても国語の授業です。ノートルダムの特徴的なことは、英語と同様に「言語技術」の授業も実施しているところです。北村先生は、ご自身の豊かな経験と学会に論文を提出し続けるほどやはり熱心に研究して、独自の世界標準の言語技術の授業を展開しています。

興味深いのは、ディーン先生と北村先生は対話をしながらお互いに情報を共有しています。北村先生もカナダの大学の“Language Arts”などの文献もリサートしています。ノートルダム女学院ては、英語と国語を「ことば」として授業で展開しているのです。

そして、ディーン先生は同僚とそのスキルを共有しています。たとえば、星野先生がグローバルコースで実施している、「ハウス」というプログラムにもかかわっています。高1から高3の縦割りのチームで1つのトピクについてリサートして、知見を広め自分たちの考えを深め最終的にはプレゼンテーションする長いスパーンのプロジェクト学習です。もちろん、英語を使います。

 

 

星野先生は、「認知的な能力だけではなく、チームワークの作り方も学び、総合的な力によって一人一人が自己変容して大きく成長していくプログラムです」と語ります。

北村先生も、国語科と「国語表現」と「言語技術」の共通点を情報共有し、言語技術が国語の中でも活用しやすいように接点を探しています。

実際、中学の在校生に対してアンケート調査をして、「言語技術」を44.1%の生徒が国語で活用していることを意識していると回答しています。英語に対しても38.7%という回答がありました。「比較・対照」「事実と意見」「因果関係」「具体と抽象」「メタファー」などのスキルは、たとえば、国語の小論文や英語のエッセイを生徒がパラグラフライティングの手法で書くときに活用するわけですから、そのような生徒の意識があるのは、たしかにうなずけます。

 

 

さらに、おもしろいのは、35.5%の生徒が数学でも意識していると回答したことです。数学科の北島先生によると、「数学でも比較・対照は大事な視点です。それから私が実施している総合学習では、北村先生と相談して、パラグラフライティングの手法を導入しています」ということでした。

 

ノートルダム女学院の法人のリサーチャーは、授業リサーチや先生方とのインタビューを通して、「ノートルダム女学院の授業の中で、生徒は十分に世界標準の言語技術や思考スキルを活用しています」と語っています。

そのリサーチャーによると、自身のリベラルアーツの考え方を簡易化した「思考スキル」(上記図)や多くの学校で活用されているロイロノートの思考ツール、新学習指導要領に対応するために各自治体でも活用されている関西大学の黒上晴夫教授のThinking Took、国際バカロレアで活用されているATLスキルなどと比較した結果、そう判断したということです。

 

 

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