ノートルダム女学院中学高等学校 2020年度 入学式 式辞

 

 

ノートルダム女学院中学高等学校 2020年度入学式 式辞

 

2020年7月4日

 

学校長 栗本嘉子

 

 

 

新入生の皆さん、ノートルダム女学院中学高等学校が、7月にこのような形で入学式を行うことは、およそ70年の創立以来、初めてのことです。私は、皆さんをこのようにお招きし、ここに集うすべての方々がファミリーメンバーであることを確認することができ、本当に喜んでいます。そして、ノートルダム女学院へのご入学、誠におめでとうございます。保護者の皆様、高いところからではありますが、お嬢様のご入学、誠におめでとうございます。4月から、この出来事をよく受け止めて、想像できようもなかった制限だらけの状況の下で、生徒の皆さんは本当に一生懸命頑張って、よくここまで辿りついてくださった。保護者の皆様は、お嬢様に温かく同伴くださり、よくお支えくださいました。心より感謝申し上げます。本日の入学式にあたって、まず私が申し上げたいことは、このことでした。

 

そして、本日は特別に、神父様をお迎えしています。カルメル会の中川博道神父様、本日はこの特別な入学式に、生徒たちとそのご家族に神様の祝福を与えてくださるために、ようこそご臨席いただきました。心より感謝いたします。

 

新入生の皆さん、今お話ししたように、皆さんはノートルダム女学院中学高等学校という家族、ファミリーの一員として、既に困難な状況を共に歩んできました。ファミリーとは、偶然寄せ集められた人々の集団ではなく、同じ心で成長を遂げようとする人々から成る温かいコミュニティ、共同体を意味します。ですから、苦労も、喜びも一緒に体験し、泣く人と共に泣き、喜ぶ人と共に喜びます。

 

ノートルダム教育をしっかりと受けたあなたが、18歳になって卒業していく時、その姿はどうなっていてほしいのかという私の願いを述べます。

 

あなたは、その時、自分が神様からこの上なく愛されて生かされていることを知り始めており、自分も他者も尊び、大切にすることができるようになっています。

 

あなたは、その時、自分の可能性を信じ、自分の内なる力を注意深く見つめながら成長し、神様がみ許にお呼びになるその日まで、その成長は続くと信じることができます。

 

あなたは、その時、自分のすぐ近くで、またこの世界のどこかで、弱い立場、つらい立場に置かれている人のことを決して忘れることなく、しっかり共感する心をもっており、自分から出かけて行って、彼らの幸せのために、自分にできる限りを尽くして行動しようと努めます。

 

ところで皆さん、先月の初めての放送朝礼で、私は皆さんに宿題を出しましたね。あなた方が6年間、3年間かけて考え抜く課題だと申し上げました。憶えていますか?それはこの世界的な感染拡大が私たちに気づかせたことがらを、どう受け止めて、私たちはどう行動すればよいか?という問いかけでした。もう一度、保護者の方々もいらっしゃるところで思い出してみましょう。

 

この地球上で今、数えきれない人々が犠牲になっている新型コロナウイルスの感染拡大は、まさに、世界が一つにつながって、見えない敵と戦っているという言い方ができるでしょう。しかしながら一方で、この病原菌の存在が明らかにした地球の姿もありました。すなわち、貧しく弱い立場に置かれている人、医療も早期に受けられず、情報の蚊帳の外に置かれながら、心細く生きるしかなかった人々から先に、その尊い命を奪っていったと言われています。教育も医療もしっかりと受けられ、多くの人々の栄養状態も良い、そのような国に住んでいる私たちは、知らない間に、そのような心細く生きなければならない人々とは違う世界、別な世界に住んでいる、この格差の現実が、この地球を襲ったウイルス感染によって明らかにされたと言ってもよいのです。私たちの住む地球には、こうした現実があるのです。貧しい人々、何も持たない人はさらに貧しくなり、持っている人々はどんどんお金持ちになる。貧しい人々はそれを訴える言葉も持たず、強い人々は聞く耳も持たない。地球は強い人々によってますます破壊され、至るところで悲鳴を上げているのに、聞こえないふりをして生きている。豊かな国に住む私たちの多くは、そのことに気づき始めています。気づいた私たちは、どうすればよいのか。皆さんには、それをもっと考え、悩みながらも深く知ろうと日々学ぶことをしてほしいのです。このウイルス感染の前の世界を知りながら、感染後の今の時代を生きていく私たちは、これから何をどう選択してこの地球で生きていけばよいのか、という問いです。

 

この宿題は、生易しい課題ではありません。でも、ノートルダム女学院で学ぶあなた方は、この課題をたった一人で解決せよとも言われてはいない。同じゴールを目指す仲間と共に、解決に向かって努力してほしいのです。ノートルダム教育を受ける皆さんは日々、生きとし生けるものはすべて神様がおつくりになったものだと知っていきます。そして、それを尊ぶことを学びます。社会や宇宙の仕組みの中で、あらゆるものが支え合い、対話的に関わっていることを知り、また、自分もその一員である自覚をもっています。ですから、そのようなノートルダム教育を今、受けているあなたこそ、神様の手足となってよい働きをしてください。そして、それがノートルダム教育の掲げる「徳と知」の精神であります。

 

さあ、これから、皆でさらに力を結集し、いかに困難な時代にあっても、地球の希望となる温かい共同体、ノートルダム女学院中学高等学校を皆でつくって参りましょう。

 

神様の祝福が皆様の上に豊かにありますようにお祈りいたします。

 

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