ノートルダム女学院中学校 2019年度 卒業式 式辞

ノートルダム女学院中学校 2019年度卒業式 式辞

2020年3月19日

 

学校長 栗本嘉子

 

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また本日は、式の縮小化の為にお招きできなくなったご来賓の方々の中で、唯一、ご来校頂いた菅原友明神父様、心より感謝申し上げます。

 

 さて、私たちは、現在、新型コロナウイルス感染症拡大によって、これまでに、世界で約15万人以上の方々が罹患し、今現在もなお、約8万人以上の方々がこれによって苦しんでおられます。この感染症拡大がきっかけで、世界経済の落ち込みや、社会機能の制限によって、個々人の社会生活も大きな影響を受けています。本校も、3月2日から一斉休校を余儀なくされ、皆さんの中学時代の最後の日々が学校で過ごせなくなり、皆さんにとっての大切な卒業式はこのような形になりました。つい先月には想像もつかなかったあらゆる不測の事態が押し寄せ、私たちの想定していたことが次々とできなくなっていくことに対し、大変な試練の時を与えられています。普段何不自由のない生活を送ることがある程度当たり前と考える傾向があるために、このように立ちはだかる壁の前には本当に無力でただやるせない怒りと失望が押し寄せる。でも、このような先行きが見えない中での卒業式に際し、あなたがこの3年間の日々に何を学び、何を感じ、友人たちをどう過ごしたか、そのことを、特別に今、思い巡らせてください。あなたの3年間は、本校においてどのような日々であったのか、何を大事に生きてきたのか、何を達成したのか、これからやりたいことは何か。そのことを、一人静かに思い巡らす時、その黙想は、きっとあなたの未来に意味を与え、これからのあなたの日々に目標と希望を改めて与えるものとなるでしょう。このような危機に際し、人は自分自身に立ち返ることが非常に大切なのです。

 

 そして、もう一つ大切なこと、それは、この与えられた試練のような時間を、どのように過ごせばよいか、それは、皆さん一人ひとりがだれにも阻止されることなく、自分で主体的に考えることができる、という素晴らしい「自由」が与えられている、ということも、私は本日皆さんと共有したいと思います。状況や環境は、たとえ制限がかかろうとも、皆さんの心意気次第、志(こころざし)次第で、つらいことは楽しいことに、嫌なことは喜びに、また試練を恵みに変えていくことができる。そのことに気づくか気づかないか、の違いはあまりにも大きいのです。神様は、私たちに乗り越えることのできない試練をお与えになることはない。仲間と一緒に、与えられた境遇の中で、力一杯精一杯、「今」という時を見つめ、その時間を懸命に生きようとする時、必ずや神様は、私たちにトンネルの向こうの光を見せてくださいます。それは、過去を悔やんだり、未来を案じたりするのではなく、「今」この時を、どういう態度で、どういう心で生きたらよいか、ということを、一生懸命に考えた者だけに与えられる賜物なのかも知れません。

 

 たとえ、何を失っても、たとえすべてが奪われたとしても、あなたが生きている限り、あなたが心を失わない限り、あなたがこの世界に対して、どのような態度で向き合うのか、それはあなた自身の自由であり、その自由は、決してだれによっても、何によっても奪われることのないものなのです。私はこの考え方をオーストリアの精神科医、ビクトール・フランクルから学び、皆さんの中学生活の終わりの日に、特に、今の皆さんにプレゼントするのにふさわしいと感じました。皆様のご卒業に際して、神様の祝福が豊かにありますように、心を込めてお祈りをいたします。

 

 

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