学校長からのメッセージ「危機のさなかで新たな道を歩み始めるために」

 

危機のさなかで新たな道を歩み始めるために

 

学校長  栗本 嘉子

 

 

 

1.カトリック学校として「今」

 

現在、新型コロナウイルスは、世界中をシャットダウンさせ、多くのいのちを奪い、私たちの暮らし、経済、文化をも、一度に大停滞させているという未曽有の地球的危機をもたらしています。この状況の下で、私たちは、「どうすればよいのですか?」と誰にも問えない、解のない問いを突きつけられています。むしろ、立ちはだかるこの状況そのものが、私たちにその問いを突きつけていると言うことができます。

 

カトリック学校である本校として、私たちは、この世界的危機への解決への道を、「新たに生きる道への招き」、「新しいフェイズへの扉」として捉えたいと思います。今回の地球規模の経験の中で、フランシスコ教皇がおっしゃるように、全人類が共に生きる地球で、お互いを家族として思いやり、支えあって生きていく新しい在り方として、人類として真に生きること改めて模索するべき時が到来しています。その道とは、利己から利他へ、心を回す自己内における作業、あるいは変革の道です。私たちは、このような多くの命の危機に脅かされる状況の下で、自分たちの価値観の狭さ、「自分が」「自分の家族が」「自分の職場が」「京都が」「自分の国が」という狭い観点で情勢を観てしまうという誘惑に打ち勝ち、今こそ、地球規模で私たちの尊い「いのち」を、慈しみをもって見つめること、新しい価値を創造することを躊躇しないこと、偏見や固定概念から自由になる勇気を持つこと、弱い立場に追いやられている人々や情報から取り残されていく人々、孤独と哀しみの立場に置かれている人々を忘れず、その方々に思いを馳せ、その方々の為に祈りながら、小さなことから、たった一人であっても、行動していく英知と勇気をもつべき時です。

 

すでに人類は、このパンデミックに、国境や文化や言語を超えて、お互いに情報を流通させ、信頼関係を築き、協力し合って、真摯に向き合おうとしている。それこそ、これまでとは異なる新しい社会を構築するチャンスに恵まれているという捉え方もできます。既存の枠組を一旦手放し、新しい世界観でものごとを捉え直す、大きなチャンスが到来してきているということが言えます。

 

 

2.4つのVと4つのC ~ ノートルダム教育の方向性

 

では今、この京都の東山に小さく佇む私たちの学校が、新しい世界観の構築のためにできることがあるとすればそれは何なのでしょうか。利他の精神を高揚させ、新しい価値の創造に貢献することができる道があるとすればそれは何なのでしょうか。それは、これまでの穏やかな日常の中で我々がずっと模索してきた道です。

 

すなわち:

 

〇聖母マリアの生き方を軸としたミッション・コミットメントの4Ⅴ

       「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」

 

〇ノートルダム教育推進の中で掲げてきた、真に思考するための4C

「コミュニケーション力」(Communication)

「協働的問題解決力」(Collaboration)

「批判的思考と問題解決力」(Critical-thinking & Problem-solving)

「創造性とイノベーション」(Creativity)

 

このことを、今こそ、一人ひとりがフル稼働させ、ノートルダムとして一つになって、教職員一人ひとりが、生徒たちの一人ひとりが、保護者たちの一人ひとりが、この道を生きようと努力することに他なりません。その為に続けてきたこの歩みの一歩をさらに強める時、私たち一人ひとりは、どんな困難にも皆で力を合わせて、心を一つにして、創造的に立ち向かうことが可能になります。ご一緒に、この時を果敢に乗り越えたいと思います。

 

 

3.本校が「今」行うべきこと

 

さしあたり、本校では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の為に、具体的に最大限の対策を実行します。入学登校日、始業登校日以降、休校を余儀なくされるという状況を受け入れ、同時に、ノートルダム生たちの在宅での生活リズムを整え、学びを支え、成長に同伴するという学校の担うべき使命を果たし続けます。これらを両立すべく、生徒・保護者・教職員すべてが協働し、オンライン授業を始めとするあらゆる情報伝達技術の手段を活用しつつ、学びの環境づくりを整備し、継続します。

 

毎日、生徒たちが学校に集い、教職員と共に学びを進めるという、当然のように享受していた環境が手に入らない状況の中で、私たちノートルダム女学院は、この逆境を「新しい教育にチャレンジする機会」と捉えます。そして、試行錯誤を続けた先の進化の瞬間を喜びに変容させながら、「世界標準の新しい教育」を本校から発信していけるよう、新しい教育システムの構築を進めていきます。

 

さあ、ご一緒に、この危機に果敢に向き合って、新たな道を歩み始めましょう。

 

 

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